寝室の適温は?
寝室の適温に関しては、快適さ、健康、睡眠の質といった観点から多くの学術的・医学的な研究が行われています。以下に、代表的な学説やガイドラインを比較しつつ、総合的な見解を論じます。
1. 世界保健機関(WHO)のガイドライン
WHOは住宅の健康的な室温に関するガイドラインを示しており、特に以下の点を強調しています。
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最低気温:18℃以上
高齢者や乳幼児がいる場合は、20℃以上が推奨されます。 -
健康リスク(循環器疾患、呼吸器疾患)を避けるには、これ以下の温度は危険とされています。
寝室に関して:
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WHOのガイドラインは昼間の居住空間の温度に重きが置かれており、寝室の温度についてはやや柔軟ですが、夜間でも18℃未満は避けるべきと示唆されています。
2. アメリカ睡眠医学会(AASM)およびSleep Foundation
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推奨温度:15.5〜19.5℃(約60〜67°F)
この範囲は睡眠の質を高めるとされており、特に深いノンレム睡眠(徐波睡眠)を促進することが報告されています。
体温が夜間に自然に下がる過程を助ける温度帯と一致しており、入眠を促進する効果があります。
3. 日本の気候と学説
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日本睡眠学会では、**室温は16〜20℃、湿度は40〜60%**が推奨されています。
ただし、夏と冬で適温の感覚に差があるため、断熱性能や寝具、個人の感じ方に応じて調整すべきとされます。 -
また、寒冷地では暖房がないと15℃未満になることもあるため、地域差を考慮する必要があるという見解もあります。
4. 個人差・年齢・健康状態の考慮
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高齢者や乳幼児は低体温のリスクが高いため、18〜22℃が望ましいとされます。
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一方、若年・健康な成人では16〜19℃が快適と感じる人が多い傾向にあります。
5. 睡眠における体温と温度環境の関係(生理学的観点)
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睡眠時には体の深部体温が下がることが自然なプロセスです。
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寝室が暑すぎるとこの体温の低下が妨げられ、入眠困難や中途覚醒が増加する可能性があります。
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逆に寒すぎると交感神経が刺激され、睡眠の質が悪化する。
総合的見解:寝室の最適温度は?
人の属性 | 推奨される寝室温度 |
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健康な成人 | 16〜19℃ |
高齢者・乳幼児 | 18〜22℃ |
一般家庭(冬場) | 18〜20℃ |
一般家庭(夏場) | 25〜27℃(冷房時) |
ただし、温度だけでなく湿度(40〜60%)や通気性、寝具の断熱性能も重要な要素です。
結論
寝室の適温は「個人の年齢・健康状態・住環境」によって左右されるため、一概に「この温度がベスト」と断言はできません。しかし、**15.5〜19.5℃**という範囲が多くの研究で支持されており、これを中心に考えながら、住環境や寝具で調整することが理想です。