ED
ED(勃起不全、勃起障害)
性行為において十分な勃起が得られない、または維持できないために満足な性行為を行えない状態のことを勃起障害(Erecetile Dysfunction:ED)と言います。以前はインポテンスと呼ばれましたが、差別的であることから勃起障害(ED)と呼ばれるようになりました。 日本国内の統計では軽度のEDを含めると1800万人といわれ、3人に1人がEDという割合になり、 特に高齢になるほど増加し60歳以上では2人に1人がEDといわれています。
EDの分類と原因
EDは、血管や神経の障害による器質的EDと精神的ストレスなどによる機能的ED(心因性ED)、そして上記2つの特徴を併せ持つ混合性EDの3つに大きく分類されます。
器質性勃起障害
器質性勃起障害とは勃起にいたるまでの一連の流れのどこかに何らかの病気が生じることによる勃起障害です。
- 脳が性的刺激を受けて活発になる。
- 脊髄を通る副交感神経を経て陰茎の血管が拡がる
- 陰茎の血流が増えて勃起する。
具体的には、脊髄損傷や脳血管障害などの神経の障害、加齢、高血圧、喫煙、糖尿病、脂質異常、包茎や尿道の奇形(陰茎の異常)などがあげられます。
機能性(心因性)勃起障害
機能的(心因性)としては自慰行為における勃起は可能であっても、性行為のパートナーとなる女性との関係がうまく作れないような場合、また極度の緊張に陥ってしまうために勃起不全となるようなケースです。この障害に陥る原因としては、過去に性行為において失敗した経験がトラウマとなって性交に対する不安が生じたり、パートナーとのトラブルが生じたり、妊娠と子作りのためにかかるプレッシャーが生じたり、といったことが挙げられます。他にもうつ病などの精神疾患があげられます。
混合性勃起障害
器質性勃起障害で述べたような何らかの病気が原因となって勃起障害が生じるだけでなく、勃起障害が原因となり性交に関する不安やトラウマが生まれてしまうことで、さらに勃起障害が助長されるようになります。
EDの診断
一番重要なのは問診です。 国際勃起機能スコア(IIEF)などを用いて診断します。
国際勃起機能スコア(IIEF)
スコアの合計点をもとに、EDの重症度を確認します。
特殊検査として、専門医のもと夜間勃起現象の評価を行うため、リジスキャンプラスを行ったり、血管性EDの鑑別のため、プロスタグランジンE1の海綿体注射を行ったりすることがあります。
EDの治療
ED治療薬バイアグラの誕生を期に、ED治療が簡便になり、 現在、バイアグラ(先発品)(自費診療 25mg/個/2500円、50mg/個/3000円)、レビトラ(ジェネリック)(自費診療 10mg/個/2500円、20mg/個/3000円)、シアリス(自費診療 5mg/個/3000円、10mg/個/3500円、20mg/個/4000円)が用いられます。 いずれも、個人差はありますが、その有効率は70から80%くらいです。 しかし、網膜色素変性症、重度の肝障害、低血圧症、硝酸剤内服中の方には処方できません。
※「レビトラ」は販売中止にてジェネリック医薬品のみご利用可能です。
2022年4月より不妊治療の目的に限り、条件適用下でのみ保険適用可能となりました。
泌尿器科で5年以上の経験を有する医師から処方を受ける
たとえ大きな病院やクリニックだったとしても、泌尿器科で5年以上の経験がない医師からの処方は、保険適用外になります。
気になる方は、事前に電話やホームページなどで確認しておくことをおすすめします。電話で確認する場合は、不妊治療を目的としてED治療薬を処方してほしい旨を伝えましょう。
他の医療機関からの紹介で治療する場合、十分な情報共有がされている
不妊治療を行っている方に対して治療薬を投与する場合は、紹介元と紹介先間で情報共有がされていなければなりません。
紹介元と紹介先間で、患者さんの情報共有を行い、紹介先が正しい情報を把握しておく必要があります。
ED診療ガイドラインにもとづき、EDと診断されている
日本性機能学会・泌尿器科学会が作成したED診療ガイドラインの診断アルゴリズムに沿ってEDと診断されていることが条件です。
病歴を確認し、身体所見や臨床検査を行い、血糖値やテストステロン値などを確認する必要があります。
全ての医療機関で血糖値やテストステロン値の検査ができるわけではありません。事前に保険適用のためのED診断ができるか確認しておきましょう。
本人もしくはパートナーのいずれかが6ヶ月以内に不妊治療を受けている
現在不妊治療を受けている方であれば問題ありません。また、不妊治療を中断している状態でも、最後の受診が6ヶ月以内であれば保険適用されます。
もし、不妊治療を受けたことがない場合は1度不妊治療を行っている医療機関を受診し、不妊の原因を明らかにしましょう。
1回の診療で処方される数量はタイミング法における1周期分に限り4錠以下である
不妊治療におけるタイミング法とは、女性の生理周期に合わせ、排卵日付近で性行為を行って妊娠確率を高める方法です。
女性の生理周期が約1ヶ月のため、1ヶ月につき4錠以下の処方を受ける必要があります。
投与の目安を6ヶ月間とする
不妊治療を目的とし、保険適用でED治療薬を処方してもらえるのは6ヶ月までです。ただし、初回の処方から6ヶ月経っても妊娠しない場合は、継続の必要性があれば服薬の継続ができます。
必要と判断した理由と初回投与の年月を、診療録・診療報酬明細書の摘要欄に記載することが必須条件です。また、服用を継続する場合の継続期間は、初回の投与から1年以内です。
処方箋の備考欄に保険診療である旨が記載されている
ED治療薬を保険適用で処方してもらう場合、処方箋の備考欄に保険診療であることが記載されていなければなりません。万が一、備考欄に記載がない場合は、申し出るようにしてください。
費用を抑えたい場合はED治療薬のジェネリックも選択肢に
保険適用となるED治療薬は、種類が限られます。また、適用条件が多くあり、場合によっては活用が難しい場合があるでしょう。
このような場合は、ジェネリックを検討してみてはいかがでしょうか。ジェネリックは、先発品に比べて価格が安いです。また、薬の種類が豊富であり、患者さんにとって飲みやすい形状や容量になっています。
費用を少しでも抑えたい方は、先発品と効果が同等されるジェネリックの購入をおすすめします。
EDの保険適用は条件が限られる?適用条件を解説まとめ
ED治療は、不妊治療を目的とする場合、保険適用になります。保険適用になる条件は以下の通りです。
- ●泌尿器科で5年以上の経験を有する医師から処方を受ける
- ●他の医療機関からの紹介で治療する場合、十分な情報共有がされている
- ●ED診療ガイドラインにもとづき、EDと診断されている
- ●本人もしくはパートナーのいずれかが6ヶ月以内に不妊治療を受けている
- ●1回の診療で処方される数量はタイミング法における1周期分に限り4錠以下である
- ●投与の目安を6ヶ月間とする
- ●処方箋の備考欄に保険診療である旨が記載されている
上記の条件を満たし、パートナーと一緒に不妊治療に取り組み、かつ勃起不全が不妊の原因となっている方は保険適用になります。対象の方は、保険適用を利用し、治療費を抑えながら治療してください。
※当院では、2024年9月現在、保険診療でのED治療を行っておりません。
ED治療薬の処方のみとなります。あらかじめご了承ください。