睡眠時無呼吸症候群の治療方法『CPAP(シーパップ)』とは?メリットデメリットや副作用も紹介
睡眠時無呼吸症候群の症状がある方には、CPAP(シーパップ)の使用がおすすめです。
睡眠時に装着するだけで呼吸を楽にするため、睡眠不足で日常生活に悪い影響が出ている方でも症状が改善する可能性があります。
この記事では、CPAP治療のメリット・デメリットや副作用の種類、CPAP以外の治療法についても紹介します。
睡眠時無呼吸症候群の治療で使うCPAP(シーパップとは?
CPAP(シーパップ)とは、鼻から圧力をかけた空気を喉に送って気道を広げることで、呼吸をしやすくする治療法です。
15〜20cm程度の大きさのCPAP機器本体と、チューブ、マスクから成る機器を睡眠中に装着して使用します。
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に10秒間以上呼吸が止まることを繰り返す病気です。
いびきなどの症状を伴うだけでなく、睡眠の質が下がるため日中にひどい眠気を感じることがあります。
また、放置していると高血圧や心臓病などの深刻な病気に繋がることもあるため、早急に治療が必要です。
CPAPの圧力の大きさは常に一定の圧力を保つ場合と、無呼吸になった際に圧力が増すパターンとの2つがあり、睡眠時無呼吸症候群の症状によって医師が設定します。
CPAP治療を行うことで睡眠中の呼吸が楽に行えるようになり、無呼吸やいびきの症状が和らぐため、日中のひどい眠気やだるさなどが改善する可能性があります。
CPAP(シーパップ)のメリット・デメリット
CPAPは就寝時に付けるだけで呼吸がしやすくなり、睡眠の質を上げることが可能で、マスクを付けるだけのため、簡単で治療効果が高く即刻性も期待できる治療法です。
副作用もほとんどないため、睡眠時無呼吸症候群にお悩みの方が取り入れることが多いことも特徴です。
メリットの多い治療ではありますが、もちろんデメリットもあります。
CPAPによる治療を受けたいと考えている方は、メリットとデメリットを把握し、よく検討しましょう。
メリット
CPAPのメリットには、主に以下が挙げられます。
- 即効性がある
- いびきや睡眠の質の改善が期待できる
- 重大な病気のリスクを防げる
- 身体へのダメージがほとんどない
- 保険適用で治療を受けられる
CPAP治療の最大のメリットは、即効性があることです。
CPAPは気道を広げる効果があるため、治療開始日や数日中にいびきの軽減や睡眠の質の向上が見られる可能性があります。
睡眠の質が改善することにより、日中のひどい眠気がなくなります。
そのため、仕事の会議中に寝てしまったり、だるさが続いて日中のパフォーマンスを低下させたりといった悩みが解決する可能性があるでしょう。
充分な睡眠が取れないことによる生活習慣病のリスクや脳出血・心不全などの重篤な病気のリスクを下げることも期待できますが、即効性がある治療ですぐにそれらの悩みを改善させます。
また、身体へのダメージがない点もメリットの1つです。
CPAPは、薬品や手術を伴う治療ではないため、身体へのダメージはほとんどありません。
マスクを付けるのみで使用でき、身体への負担を最小限に抑えたまま、呼吸を補助してくれます。
最後に、保険適用で治療を受けられる点もメリットとして挙げられます。
CPAPは、睡眠時無呼吸症候群と認められた場合、保険適用で機械を借りることが可能です。
医療費の負担は、保険適用が3割負担の場合月々5,000円程度となるため、経済的な負担を最小限にしながら睡眠の質を改善できます。
デメリット
簡単に装着でき、命に関わる重大な病気のリスクを下げられるCPAPですが、一方で以下のようなデメリットも挙げられます。
- 睡眠時は必ずCPAPの装着が必要
- 口呼吸になった場合に効果が半減する
- 毎日のメンテナンスが必要
- 医療機関や専門のクリニックへの通院が必要
CPAPは、睡眠時無呼吸症候群の根本治療にはなりません。
気道を広げて呼吸を助ける治療のため、使用をやめると眠りが浅い状態に戻り、いびきなどの症状が復活します。
CPAPは、最低でも1日4時間以上、週5日以上の使用が推奨されており、ほぼ毎日装着しなければいけません。
根本的な治療ではないことから、毎日装着することが億劫だと感じる方もいるでしょう。
また、口呼吸が習慣づいている場合、CPAPを付けている際に口呼吸を行うと、口から空気が漏れてしまい効果が半減する恐れがあります。
どうしても鼻呼吸ができない方は、口にテープを貼るなどの対処が必要です。
次に、メンテナンスについてです。
CPAPは鼻に装着して呼吸を行うため、定期的な洗浄や拭き取りが必要で、メンテナンスを怠ると、汗や呼吸の際の水蒸気で汚れたりカビが発生したりします。
不衛生な状態は機器の故障にも繋がるため、正しい方法でメンテナンスしましょう。
最後に、通院が必要な点もデメリットとして挙げられます。
定期的に通院して身体の状態や空気圧の調整が必要なため、1〜3ヶ月に1回程度病院に行く必要があります。
また、使用前には1〜2日程度検査入院も必要です。
仕事などで忙しい方は、通院の時間を確保するのが難しいと感じる場合もあります。
CPAP(シーパップ)のマスクの種類
CPAPのマスクには、大きく分けて3つの種類があります。
- ネーザルマスク
- フルフェイスマスク
- ピローマスク
それぞれの特徴を押さえ、自分の症状に合ったものを使用することが大切です。
3つのマスクの特徴について、詳しく見ていきましょう。
ネーザルマスク
ネーザルマスクは、鼻だけ覆うタイプのマスクで、顔を覆う範囲が少ないため視野が広い点が特徴です。
就寝前にCPAPを付けた状態で読書をしたりテレビを見たりする方は、ネーザルマスクが向いています。
ただし、装着中に口を開けると、口から空気が漏れ、効果が半減する場合があります。
口呼吸の傾向がある方は、次に紹介するフルフェイスマスクを選んだ方がよいでしょう。
フルフェイスマスク
フルフェイス型のCPAPは、口と鼻の両方を覆うタイプのCPAPです。
口呼吸の方でも空気が漏れることがなくなるため、鼻呼吸が苦手な方や慢性的に鼻詰まりに悩んでいる方に向いています。
フルフェイスマスクは顔を覆う面積が多いため、最初は窮屈感を持つ可能性がありますが、次第に慣れてくるため習慣化することが重要です。
ピローマスク
ピローマスクは、鼻の下から差し込むタイプのCPAPです。
ネーザルマスクやフルフェイスマスクよりも小型で軽量のため、装着がしやすく持ち歩く場面が多い方に向いています。
付けている際の窮屈感がなく視界がよいため、寝る前に読書やテレビを見る方や、閉所恐怖症の方にも向いています。
CPAP(シーパップ)の副作用
CPAPは、重大な副作用が出ることの少ない治療法です。
しかし、以下のような症状が起こることがあります。
- 目が充血する
- 気道の乾燥
- 皮膚のかぶれ
- 耳鳴り
- お腹の張り
副作用が出た場合には、CPAPの装着方法や圧力、サイズなどを見直す必要があります。
CPAPの副作用について詳しく見ていきましょう。
目が充血する
マスクから空気が漏れることによって目の結膜が乾燥し、充血や不快感が起こる可能性があります。
マスクをズレがないようにきちんと付けることで、充血のリスクを避けることが可能です。
また、加湿器を利用して乾燥を防いだり、充血が酷い場合はマスクのリサイズを検討したりして、対処しましょう。
気道の乾燥
2つの理由によって気道が乾燥し、目が覚めた際に喉の渇きを感じる場合があります。
気道が乾燥する原因の1つ目は、空気が乾燥しているためです。
部屋の湿度が低いと、CPAPを付けていても口内の乾燥を感じるケースがあります。
2つ目の理由は、睡眠中に口が空いてしまっているためです。
口呼吸の癖がついていたり、骨格上口が開きやすかったりする方は、寝ている間に口が空いてしまう場合があります。
加湿機能が付いている機器を選んだり、睡眠中に口を閉じるテープを貼ったりすることによって、改善できる場合があります。
皮膚のかぶれ
マスクを付ける部分にかぶれが起こる可能性があります。
空気が漏れるのを気にしてマスクを強く締め過ぎていると、鼻根部分が皮膚炎を起こす可能性があります。
起床後に少し赤みが残っている程度であれば気にする必要はありませんが、長時間皮膚の変色が起こっている場合は、マスクの締め付けを緩めたほうがよいでしょう。
また、マスクを清潔に保つことも大切です。
汚れが残ったまま使用し続けると、皮膚に雑菌が繁殖し荒れてしまう可能性があります。
耳鳴り
CPAP使用している際に、耳鳴りがする方もいます。
耳と鼻は直接繋がっているため、圧力がかかった空気が耳から抜けて、耳鳴りを感じることがあります。
圧力の数値を調整することで耳鳴りが改善する場合もあるので、症状が気になる場合は医師に相談してみてください。
お腹の張り
CPAP使用後に、お腹が張ることがあります。
これは、CPAPを使っているときに無意識のうちに空気を飲み込んでしまっているためです。
お腹の張りが続く際は、空気の圧力を下げることで調整すれば、症状が改善することがあります。
CPAP(シーパップ)以外の治療方法
CPAP以外にも、睡眠時無呼吸症候群を治療する方法は複数あります。
ここでは、その他の治療法について見ていきましょう。
生活習慣の改善
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、生活習慣の改善も必要です。
1つ目に体重管理です。
普段から脂質の高い食事を取っていたり運動を全くしていなかったりすると、肥満体型になる恐れがあります。
肥満の方は喉周りに脂肪が付き、気道を狭くするため、睡眠時無呼吸症候群のリスクが上がるのです。
バランスのよい食生活や適度な運動を心がけ、体重をコントロールしましょう。
次に飲酒です。
アルコールは筋肉を弛緩させる効果があるため、就寝前にお酒を飲むと寝ている間に舌が喉の方に落ち込みやすくなり、気道を塞いでいびきの原因になります。
飲酒の習慣がある方も、できれば就寝前の飲酒はやめて様子を見ることをおすすめします。
また、タバコも睡眠時無呼吸症候群の原因です。
日常的にタバコを吸うと気道が腫れて気道が狭くなるため、呼吸がしづらくなることがあります。
一気に禁煙するのは難しいかもしれませんが、少しずつ量を減らす、医療に頼るなどさまざまな方法を検討し、禁煙を心がけましょう。
最後に寝姿勢です。
睡眠時無呼吸症候群の方は、仰向けで寝ると舌が喉に落ち込みやすく、呼吸がしづらくなる可能性があります。
就寝時は横向きやうつぶせで寝ると、呼吸が楽に行えるようになるでしょう。
口腔内装置
口腔内装置(マウスピース)は、寝ている間に装着して呼吸を助ける治療法です。
口腔内装置を付けることで上顎より下顎が前に移動し、舌が喉に落ち込んで気道を防ぐのを抑制する効果が期待できます。
ただし、CPAP治療よりは効果が低いため、睡眠時無呼吸症候群が軽症〜中等症の方に向いている治療です。
口腔内装置を使って治療する場合は、歯科医院で歯形を取ってマウスピースを作成することが必要です。
市販のマウスピースでは一人一人の口の形に合わず、効果を感じられない場合があります。
口腔内装置を使った治療を希望する場合は、歯科医院や病院で相談しましょう。
外科的治療
喉の扁桃やアデノイドが原因で睡眠時無呼吸症候群が起こっている場合は、外科手術を行うケースもあります。
CPAPでの治療は対処療法であり、根本治療ではありませんが、手術を行うことで原因を改善し、睡眠時無呼吸症候群の症状が和らぐ可能性があります。
特に子どもの場合は扁桃やアデノイドが原因で睡眠時無呼吸症候群になる場合が多いため、手術で対応するケースも多いです。
ここでは、代表的な外科的手術を2つ紹介します。
1つ目が、上下顎同時前進術です。
上下の顎の骨を切って前にずらして口の中にスペースを作り、気道を確保しやすくします。
元々は矯正歯科で行われていた手術でしたが、睡眠時無呼吸症候群の治療にも適応されるようになりました。
2つ目が、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)です。
手術によって、口蓋垂とその周辺の口蓋を部分的に切除します。
特に、扁桃肥大がある方に向いています。
これらの治療で睡眠時無呼吸症候群の症状が改善する場合がありますが、手術には入院が必要です。
また、術後の身体のダメージもあるため、医師によく相談した上で手術を受けるかどうか検討してみてください。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群の治療には、CPAPの使用がおすすめです。
CPAPを使用すると寝ている間の呼吸が楽になり、脳梗塞などの重大な病気に繋がるリスクを減らせます。
一方で、毎日のメンテナンスや定期的な通院が必要なため、面倒だと感じる方もいるようです。
国際ハートスリープクリニックつくばでは、通常1ヶ月に1回程度の受診が必要なクリニックが多い中、3ヶ月に1回のペースで通院が可能です。
頻繁に通院する時間が取れないという方は、ぜひお気軽に当院にご相談ください。