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年末年始のマスク

[2024.12.29]

インフルエンザや新型コロナに限らず、呼吸器感染症を予防するためには、公共交通機関や人混みなどでマスクを着用することが重要だ。寒い季節、マスクには鼻冷やさない効果もあるが、インフルエンザが猛威をふるい、新型コロナの患者数も増えている状況でマスクの効果を再確認したい。

マスクには効果があるのかないのか

 新型コロナの5類移行から感染対策がおろそかになりがちになっている。特に、公共交通機関など、人が多い屋内でのマスク着用が減っているのは確かだ。

 いわゆる「反マスク」の人がいるように、マスクに感染症の感染拡大を防ぐ効果があるかどうかは、賛成派と反対派が二極化され、長く議論が続いてきた。その理由は、マスクを着用した集団と着用しない集団を比較し、統計的に評価することが難しいということがある。

 例えば、日常生活をおくる子どもを含んだ地域社会の集団を対象に、いつもどのようにマスク着用が行われているのかを評価するのは難しい。対象の集団の中にはマスクを忘れてしまったり、効果の低い着用の仕方だったりするからだ。マスクが効果を発揮するためには、マスクと顔の間から出入りする空気の量を少なくしなければならず、マスクと顔の間をなるべく密着させなければ効果は低くなる。

 集団を対象にした研究では、どのマスクを着用していたのか、正しく着用していたのかを把握しなければならないが、現実的にはなかなか困難だ。このように、マスクの感染防止効果を正しく評価しにくいが、それでもマスク着用にインフルエンザや新型コロナなどの感染拡大を防ぐ効果があるという論文は多い。

 この論争に終止符を打つと思われる研究も出ている。ノルウェーなどの研究グループは、18歳以上の4647人(60.9%が女性、平均年齢51歳、2371人が介入群、2276人がコントロール群)を対象に、介入群には14日間、公共の場所(ショッピングセンター、路上、公共交通機関の中など)でサージカルマスクを着用するよう設定し(マスク着用群)、コントロール群には公共の場でマスクを着用しないように求め(マスクなし群)、その後、呼吸器感染症の症状があるかどうかを自己申告で調べた。

 その結果、呼吸器感染症の症状ありでマスク着用群が8.9%だったのに比べ、マスクなし群では12.2%となり、マスク着用による呼吸器感染症の予防効果について統計的に有意な差があった。

ユニバーサル・マスクの重要性

 一方、どんな種類のマスクを着用するかも重要だ。ウイルスが感染するためにはチリやホコリ、水滴、エアロゾルなどの微小粒子に付着する必要があり、この粒子のサイズが0.1マイクロメートル以下の超微小になると、分子間のファンデルワールス力などによってマスクの繊維に捕捉され、それ以上のサイズでは繊維自体の編み目に物理的に捕捉される。

 そのため、感染を防ぐ効果の順でいえば、繊維の目の粗い布製マスクが最も効果が低く、次いで多重構造の不織布マスク、医療従事者用のN95マスクとなる。インフルエンザウイルスも新型コロナウイルスも大きさは約0.1マイクロメートルだが、不織布マスクの複雑に重なった繊維層で捕捉されることが期待される。

 また、最近では、マスクに感染拡大を防ぐ効果と同時に感染しない効果もあるという見解に移行しつつある。そのためにも、呼吸器感染症の流行期には、人混みや公共交通機関の中などでは常にマスクを着用するユニバーサル・マスクが重要となる。

 感染しても発症しない潜伏期間でいえば、インフルエンザは1日から4日で発症前の24時間から発症後3日ほどが最も感染力が強く、新型コロナは変異株によるが2日から7日程度とされ、ウイルスの排出量は発症前がもっとお多いとされている。つまり、咳や発熱などの症状が出ていなくても感染力を持っているため、人混みや公共交通機関の中などでは多くの人がマスクを着用することで感染拡大を防ぐことができる。

 せっかくマスクを着用するのなら、布マスクやウレタンマスクではなく不織布マスクを、顔にしっかり密着させて使ったほうがいいだろう。

 もちろん、顔の皮膚への刺激、感覚過敏など、いろいろな理由でマスクを着用できない人もいる。呼吸のしにくさ、表情がみえにくいことでの視聴覚障害者や子どもなどがコミュニケーションを阻害されるといった弊害なども指摘されている。

 こうした人への配慮は必要だし、マスクをするしないは個人の自由で強制されるものではなく、いつでもどこでもマスクを着用する必要はない。人混み以外での屋外、屋内でも人が少ない場所や会話がない場合などではマスクをしなくてもいいだろう。

 インフルエンザが流行拡大をみせ、新型コロナなどの感染症も増えている。年末年始に帰省したり買い出しに出たりして人混みの中に長時間いたり公共交通機関での移動も増えるが、呼吸器感染症を感染させない感染しないためには、不織布マスクを着用し、入念な手洗いやうがい、こまめな換気などの基本的な感染対策をすることが重要だ。

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