睡眠時無呼吸症候群は何科を受診するべき?治療方法や合併症についても紹介
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に呼吸が止まることを繰り返す病気です。
大きないびきを伴うケースも多く、家族に指摘されたことのある方もいるでしょう。しかし、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合、何科を受診すればよいのかわからない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、睡眠時無呼吸症候群は何科を受診すべきか、主な治療法、そして放置しておいた場合のリスクについて紹介します。
睡眠時無呼吸症候群は何科を受診するべき?
睡眠時無呼吸症候群の兆候が見られた場合、下記の7つの診療科から受診先を選べます。
- 耳鼻咽喉科
- 呼吸器内科
- 循環器内科
- 精神科・心療内科
- 内科
- 歯科・口腔外科
- 小児科(子どもの場合)
自分に起こっている症状を確認し、まず何科を受診すべきかよく検討してみてください。
下記でそれぞれの診療科の特徴を紹介します。
耳鼻咽喉科
耳鼻科では耳や喉の状態を調べ、睡眠時無呼吸症候群の原因を調査できます。
また、鼻炎や扁桃肥大、アデノイド肥大の有無などの病気を調べることも可能です。
鼻炎の場合は薬などによる治療、扁桃やアデノイド肥大がある場合は、根本治療のために手術を行う場合もあります。
耳鼻科では喉や鼻の治療から手術までさまざまな方法に対応しているため、睡眠時無呼吸症候群の症状が気になった場合は、まず耳鼻科を受診するとよいでしょう。
呼吸器内科
呼吸内科は、肺や気管支などの呼吸に関わる臓器の病気を診察する診療科です。
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に呼吸が止まる病気のため、呼吸器内科でも詳しく診察できます。
肺の機能検査や睡眠中の呼吸の状態を見る検査などを行い、睡眠時無呼吸症候群の重症度を調べます。
また、いびきも診察の対象です。
いびきが大きくて悩んでいる方は、呼吸器内科を受診してみましょう。
循環器内科
循環器内科は、体液を身体に循環させるための器官である、心臓・血管・リンパ官などの診察を得意とする診療科です。
睡眠時無呼吸症候群と関連がある、高血圧、糖尿病、肥満症などの診療・治療をおもに行っています。
睡眠時無呼吸症候群の症状と同時に、血圧の異常や不整脈がある方は、循環器内科で検査を行うとよいでしょう。
精神科・心療内科
メンタルの不調などが原因で睡眠に問題を抱えている方は、精神科や診療内科を受診しましょう。
精神疾患がある方は、睡眠時無呼吸症候群にかかるリスクが高いと考えられています。
睡眠時無呼吸症候群は、高血圧や糖尿病、肥満などの生活習慣病が原因になることもありますが、精神疾患にかかっている方は、生活習慣病になりやすいことがわかっています。
精神疾患が原因で生活習慣病が起こり、睡眠時無呼吸症候群にも繋がる可能性があるのです。
精神面による不眠症に悩まれている方は、精神科や診療科から受診してみるのもよいでしょう。
内科
内科は、臓器の病気を幅広く診察する診療科です。
睡眠時無呼吸症候群以外の病気の可能性も考慮した上で、総合的な診察を受けられます。
生活習慣病の疑いがある場合や、健康診断で睡眠時無呼吸症候群の疑いを指摘された方など、まずは気軽に受診したい方におすすめです。
最近では、内科でも生活習慣病や睡眠障害の治療に詳しい病院やクリニックが増えてきています。
事前にホームページなどで睡眠時無呼吸症候群の診療を行っているか調べてから訪問するとよいでしょう。
歯科・口腔外科
あごの小ささが原因である場合や、噛み合わせが原因であると考えられる場合は、歯科・口腔外科での診察がおすすめです。
あごが小さいと歯が綺麗に列に入り切らず、歯並びがガタガタになります。
舌を置くスペースも狭いため、睡眠中に舌が喉の方に落ち込んでしまう舌根沈下になりやすいです。
舌根沈下は睡眠時無呼吸症候群の原因になるため、解決するためには歯科矯正を受ける必要があります。
また、寝ている間の呼吸を補助するために、マウスピースを装着する方法があります。
マウスピースの作成は歯科・口腔外科で行うため、マウスピースでの治療を希望している方も、歯科・口腔外科を受けるとよいでしょう。
子どもの場合はかかりつけの小児科へ
お子さんが睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合は、まず小児科を受診しましょう。
子どもの睡眠時無呼吸症候群の原因としては、アデノイド肥大と口蓋扁桃肥大が多いです。
アデノイドや口蓋扁桃が原因の場合、外科手術で切除・摘出を行います。
ただし、アデノイドは4〜6歳、口蓋扁桃は6〜8歳で最大になり、その後自然に退縮する傾向があります。
症状が軽い場合や他の原因が考えられる場合は、その年齢に達するまで様子を見ることもあるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群の治療方法
睡眠時無呼吸症候群の主な治療方法には、以下の4つが挙げられます。
- 生活習慣の改善
- CPAP(シーパップ)
- 口腔内装置
- 外科的治療
症状の程度や根本的解決を目指すかなどによって、選択する治療法は異なります。
それぞれの治療法について、下記で詳しく説明します。
生活習慣の改善
睡眠時無呼吸症候群が疑われる方は、生活習慣の改善を行いましょう。
睡眠時無呼吸症候群は放置することで、心筋梗塞や心不全、脳卒中など様々な病気を引き起こす可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群は悪い生活習慣が原因で発症している可能性もあるため、見直しと改善を行いましょう。
特に見直しが必要なのは、以下の4つです。
- 食生活
- 運動
- 飲酒
- 喫煙
- 寝姿勢
睡眠時無呼吸症候群は、肥満が原因で起こりうる病気です。そのため、バランスのよい食生活や、適度な運動を心がけましょう。
減量して首周りの脂肪が落ちるだけでも睡眠時無呼吸症候群が改善するため、肥満体型の方は日々の生活を見直してみてください。
また、飲酒や喫煙も睡眠時無呼吸症候群の原因になります。
アルコールを飲むと筋肉が弛緩して寝ている間に舌が喉に落ち込んでしまい、いびきの原因になります。
タバコは喉が炎症を起こして腫れやすくなるため、気道が狭くなり、無呼吸になりやすくなるのです。
禁煙や禁酒するか、量を減らすなどして対策しましょう。
最後に寝姿勢の見直しです。
仰向けで寝るとどうしても舌が喉に落ち込みやすくなるため、横向きやうつぶせがいびき対策として適しています。
抱き枕を使うなどして、姿勢を保つようにするとよいでしょう。
CPAP(シーパップ)
CPAPとは、圧力をかけた空気を鼻から喉に送り込み、気道を広げて呼吸がしやすくなるように手助けする機器です。
睡眠中は常にマスクを鼻に当てて使用します。
睡眠中の無呼吸やいびきが軽減し、質の高い睡眠を取れるようになるので、寝ても疲れが取れない、日中にひどい眠気に襲われるなどの症状が改善する場合があります。
また、身体への負担が少なく、副作用もほとんどない点もCPAP治療のメリットです。
手術や薬を使用しないため、手軽に治療を始められます。
ただし、CPAPは根本治療にはなりません。そのため、毎晩必ず装着する必要があります。
使用をやめると呼吸が止まったりいびきがひどくなったりといった症状があらわれるため、就寝時に装着する癖を付けることが重要です。
口腔内装置
口腔内装置(マウスピース)は、就寝時に付けて寝ることで、上顎より下顎を前に移動させ、舌が落ち込んで気道を塞ぐのを防ぐ治療法です。
睡眠時無呼吸症候群の症状が、軽症〜中等症の方に向いています。
マウスピースは、歯科で歯の型を取って作成する必要があります。
オンライン上で販売されているマウスピースでは口の形状に合わず、効果が感じられない場合があるため、必ず歯科医院を受診するようにしてください。
外科的治療
扁桃やアデノイドの肥大が原因の場合、外科手術で治療ができるケースがあります。
子どもの睡眠時無呼吸症候群の場合は、これらが原因の場合が多く、手術で症状が改善することが多いです。
ここでは、代表的な外科手術を2つ紹介します。
1つ目が、上下顎同時前進術と呼ばれる手術です。
上下の顎の骨を切って前にずらして口の中にスペースを作り、気道を確保しやすくします。
元々は矯正歯科で行われていた手術でしたが、睡眠時無呼吸症候群の治療にも適応されるようになりました。
2つ目が、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)です。
口蓋垂とその周辺の口蓋を部分的に切除する方法です。特に、扁桃肥大がある方に向いています。
手術による治療は、睡眠時無呼吸症候群の根本解決ができる一方で、入院を伴ったり手術後の身体的なダメージがあったりといったデメリットがあります。
医師とよく相談し、納得してから手術を受けるようにしましょう。
睡眠時無呼吸症候群が招く合併症
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に酸素が充分に脳や身体に供給されないため、睡眠の質が下がり、身体の不調や生活習慣病に関わる合併症が生じるケースがあります。
睡眠時無呼吸症候群が招く生活習慣病関連の合併症としては、以下の5つが挙げられます。
- 高血圧
- 脳卒中
- 心臓病
- 糖尿病
- 発達障害
これらの合併症の特徴について紹介します。
高血圧
高血圧は、睡眠時無呼吸症候群の方の50%に起こるといわれるほど、かかりやすい病気です。
睡眠時無呼吸症候群の方は、寝ている間に無呼吸状態になります。
呼吸が再開する際には交感神経が亢進し、それによって血圧が上昇しやすくなりますが、本来寝ている間に優位になるのは副交感神経です。
しかし、睡眠時無呼吸症候群の方は交感神経優位と副交感神経優位の状態を交互に繰り返すため、短時間で血圧変動が起こりやすくなるのです。
この状態が続くと低酸素状態になり、心臓や血管に大きな負担がかかります。
高血圧になると、動脈硬化や狭心症、心筋梗塞といった心臓疾患の発症リスクが高まるため、注意が必要です。
脳卒中
脳卒中は、がん、心疾患、肺炎に続く日本人の死亡原因4位の疾患です。
脳卒中の原因は高血圧であることが多く、高血圧を発症しやすい睡眠時無呼吸症候群の方は注意が必要です。
脳卒中を発症すると脳が出血する影響で後遺症が残りやすく、言語障害や麻痺などが起こり、寝たきりになる方も少なくありません。
健康な人が発症するケースは少なく、脳内出血の多くは高血圧によってもろくなった動脈が破れることで起こります。
脳梗塞の場合は、高血圧によってできた動脈壁の傷が熱くなり、血管が狭くなることで起こるケースが多いです。
命に関わる深刻な病気のため、睡眠時無呼吸症候群を早く治療することが大切です。
心臓病
睡眠時無呼吸症候群が原因で起こる心臓病の種類には、不整脈や虚血性心疾患が挙げられます。
不整脈とは、心臓の鼓動が不規則なリズムになることで、動機や息切れなども不整脈の1つです。
心房が充分に収縮できないため、心不全や脳梗塞を引き起こすリスクがあります。
虚血性心疾患は、動脈硬化や血栓が原因で心臓の血管が狭くなり、心臓に酸素や栄養がいきわたらない状態です。
胸に痛みや圧迫感を感じるケースがあり、突然死にも繋がる病気です。
睡眠時無呼吸症候群は動脈硬化を進行させてしまうため、心臓病のリスクを高めてしまいます。
糖尿病
頻繁にいびきをかく方は、糖尿病のリスクが2倍になるというデータもあり、睡眠時無呼吸症候群は糖尿病の発症リスクを高めることがわかっています。
睡眠時無呼吸症候群が糖尿病のリスクを高める原因は正確にわかっていません。
寝ている間に低酸素状態になることや睡眠が細切れになることで交感神経が亢進することが、糖代謝の異常を引き起こすのではないかと考えられています。
発達障害
睡眠時無呼吸症候群を発症している子どもが症状を放置すると、発達障害などが起こる可能性があります。
身体的な成長はもちろん、精神的な成長も、睡眠の質が影響すると考えられています。
精神的な不調は、睡眠時無呼吸症候群によって睡眠不足になり、神経が過敏になることでも起こりやすくなります。
治療によって睡眠の質を改善することで、正常な発達を促すことにも繋がるでしょう。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群は、耳鼻咽喉科や呼吸器内科、心療内科など、様々な診療科で受診できます。
いびきや睡眠不足などの他にも気になる症状があるかどうかによって、受診する診療科を決めるようにしましょう。
睡眠時無呼吸症候群の症状を放っておくと、高血圧や脳卒中など、命に関わる深刻な病気の発症リスクが上がります。
睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合は、早めに病院を受診しましょう。
国際ハートスリープクリニックつくばでは、睡眠時無呼吸症候群の検査や治療を行っています。
この記事でも紹介したCPAPや口腔内装置などの治療の案内もしているので、ぜひお気軽にお越しください。