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心臓病は遺伝する?主な遺伝性心疾患と予防するための方法を紹介

[2024.08.27]

心臓病は、多くの人々に悪影響を与える深刻な健康問題です。特に遺伝性心疾患は、遺伝で発症する可能性や突然死の可能性があるため、心当たりのある人は日頃から注意が必要です。

代表的な遺伝性心疾患は肥大性心筋症、先天性QT延長症候群などがあり、遺伝的に発症が心配な人は、日常的な予防をすると心配を軽減しやすくなります。

そのためには、各疾患の症状や、日頃から取り入れやすい予防法などについて知っておくと取り組みやすくなるでしょう。

この記事では、遺伝性心疾患の定義や遺伝性心疾患の種類・特徴、心臓病を予防するための具体的な方法や遺伝学的検査などについて詳しく紹介します。

遺伝性心臓病とは

遺伝性心臓病は、家族内や親等の近い関係性の間で遺伝する病気です。発症には特徴があり、近い関係者に心疾患を持つ人は注意が必要です。

ここでは、遺伝性心疾患(遺伝性心臓病)の定義や特徴、突然死との関連性などについて紹介します。

遺伝性心疾患の定義と特徴

遺伝性心疾患(遺伝性心臓病)は、親、兄弟姉妹などをはじめ、家族内や親等の近い関係性(家族歴)で遺伝する心臓の病気です。

このような心疾患は遺伝要因によって心臓、血管を含め循環器の領域で引き起こされる可能性が高く、以下のような代表的な特徴が見られます。

  • 若い年齢で発症しやすい
  • 家族・親類などにリスク要因がある
  • 突然死のリスクが高い

代表的な遺伝性心疾患には「肥大性心筋症」「先天性QT延長症候群」「遺伝性不整脈」などがあります。各疾患には特有の症状や治療法があり、適切な対策が重要です。

心臓病と突然死の関連性

遺伝性心疾患の場合、心臓の電気系統に異常が生じて心拍が不規則になることにより、致命的な不整脈を引き起こす可能性があるため、突然死のリスクが高まります。

例えば、肥大性心筋症や先天性QT延長症候群などは、発作的な心停止を引き起こす症状があるとして知られています。

早期発見と適切な管理が行われれば、突然死のリスクを大幅に減少させられる可能性があるため、早期発見が推奨されます。

家族歴がある場合は、遺伝子検査をはじめ、医療機関で積極的な検査やケアを受けることを検討しましょう。また、生活習慣の改善も重要です。

主な遺伝性心疾患

遺伝性心疾患には複数の種類がありますが、肥大性心筋症、先天性QT延長症候群、遺伝性不整脈はその代表格として知られています。ここでは、それぞれの特徴などについて紹介します。

肥大性心筋症

肥大性心筋症は、心筋が異常に厚くなる遺伝性の心疾患です。遺伝子変異により心筋細胞が異常な形態や機能を持つことで発症します。

症状として以下が現れることがあります。

  • 息切れ
  • 胸痛
  • 不整脈 など

運動中やストレス時に悪化するケースもあり、心身の健康管理が欠かせません。重症の場合、心不全や突然死を引き起こす可能性もあります。

対策として薬物療法や生活習慣の改善のほか、場合によっては外科手術やペースメーカーの装着も視野に入るため、定期的な医師の診察と継続的なフォローアップが必要になります。

先天性QT延長症候群

先天性QT延長症候群は、心拍のリズムが乱れることによって致命的な不整脈を引き起こす遺伝性の心疾患です。特定の遺伝子変異により心臓の電気系統に異常が生じることで発症します。

症状として以下が見られます。

  • 動悸
  • ふらつき
  • 失神 など

ただ、このような症状は「トルサード・ド・ポワンツ型心室頻拍」と呼ばれる不整脈にならない限りは引き起こされません。

なった場合は心停止や突然死の可能性が高くなるため、注意が必要です。

治療では、抗不整脈薬の使用や植え込み型除細動器(ICD)の装着などが選択されます。

ほかの遺伝性心疾患と同様、早期発見と適切な管理が重要になるため、家族歴がある場合は遺伝子検査が推奨されます。

遺伝性不整脈

遺伝性不整脈は、心筋細胞が遺伝子変異によって機能障害を起こし、発症する疾患の総称です。前述の肥大性心筋症、先天性QT延長症候群も含まれるほか、以下のような病状も該当します。

  • 後天性(二次性)LQTS
  • Brugada症候群、
  • 進行性心臓伝導欠損(PCCD, Lenegre病)
  • 家族性徐脈症候群(洞機能不全症候群、房室ブロック)
  • カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)
  • QT短縮症候群(SQTS) など

遺伝性不整脈は総じて重大な疾患ですが、若年で発症する患者さんがいる一方、長期間発症せず、本人や家族の健康診断で判明するケースもあります。

もし無症状であっても、重大な疾患に直面していることは事実であるため、健康診断や判明後の定期的なフォローアップなどが重要です。

心臓病の遺伝学的検査とは

心臓病のより効果的な治療の選択や突然死の可能性を下げるなどの目的のため、遺伝学情報の把握・遺伝子解析などを行う「遺伝学的検査」が選択されることがあります。

ここでは、心臓病の遺伝学的検査について紹介します。

遺伝学情報とは

遺伝学情報とは、両親から受け継いだ遺伝情報であり、原則的に生涯変わらない遺伝子の情報です。患者さんの遺伝的な病気のリスクを評価し、最適な治療法や予防策の提案に役立ちます。

例えば、特定の遺伝子変異が確認された場合、その変異が関与する疾患のリスクが高いことが分かるため、早期の対応が可能になります。

突然死の可能性が高くなる遺伝性心疾患においても、このような情報は重要であることは間違いありません。

また、ある遺伝子変異が家族内で共有されている場合、ほかの家族も同じ変異を持つ可能性が推測できるため、全員の予防的な検査や早期診断につなげやすくなる一面もあります。

遺伝子解析

遺伝子解析は、DNAの構造を詳細に調べ、特定の遺伝子変異や異常を検出する技術であり、遺伝性疾患の診断に有効な手法です。ゲノム解析と呼ばれることもあります。

遺伝子解析により、病気の原因となる遺伝子変異が特定されやすくなるため、患者さんに最適な治療法を選択する重要な情報が得られます。

また、遺伝子解析は将来的な病気のリスク評価にも役立つ方法です。例えば以下のような症状の発症リスクは、遺伝子解析によって判明しやすくなります。

  • 遺伝性疾患
  • 悪性腫瘍(がん)
  • 感染症を引き起こす病原体 など

近年の医学分野では、検査に遺伝学的検査を取り入れることが多くなっており、これからも拡大が予想されています。

検査によって遺伝子解析が進むことにより、さまざまな病気の治療の前進が期待されるでしょう。

遺伝カウンセリング

遺伝カウンセリングは、疾患に及ぼす遺伝学的な要因や医学面・心理面などへの影響について、患者さんやその家族が理解して対応できるようにサポートするために必要なプロセスです。

遺伝要因によって、患者さんやその家族は突然死などの重篤な症状が高い確率で起こる可能性に直面します。

そのような可能性はメンタル面にマイナス方向の影響が出てしまうことも考えられるでしょう。

そこで遺伝カウンセリングを行い、臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラーなどの専門家が患者さんに寄り添い、悩みや不安をサポートすることが求められます。

これからさらに遺伝学的検査が拡大すると予想される現代において、患者さんが前向きに症状と付き合っていくために不可欠な医療になるでしょう。

心臓病を予防するための方法

遺伝性心疾患をはじめ、心臓に関する病気は発症予防が重要です。ここでは、心臓病を予防するための方法について紹介します。

血圧の管理

高血圧は心臓に負担をかけ、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高めます。血圧を正常範囲に保つために、以下について意識してみましょう。

  • 減塩食の実践
  • アルコールの摂取を控える
  • 適度な運動 など

このようなフィジカル面での努力のほか、ストレス管理も効果的であり、リラクゼーション法や趣味の活動を取り入れるのもおすすめです。

医師の指導の下、定期的に血圧を測定し、異常があれば早期に対応することも意識しながら生活してみてください。

なお、正常値とされる血圧は、家庭での測定(家庭血圧)で115/75mmHg以下、医療機関での測定(診察室血圧)で120/80mmHg以下とされています。

血糖値を下げる

血糖値が高くなった状態である高血糖は、動脈硬化を促進し、心血管疾患のリスクを高めます。予防法として以下が推奨されます。

  • バランスの取れた食事を心がける
  • 適度な運動

血糖値が高い状態が継続されると、心臓病や脳卒中の発症率が高まります。日頃から血糖値をコントロールし、発症率を軽減させましょう。

個人でコントロールが難しい場合は医師の指導を受けるのも効果的な方法です。

また、糖尿病の患者さんは治療をおこたらず、医師の指示通りの服薬や生活習慣の見直しを強くおすすめします。

コレステロールの管理

コレステロール値が高いと、狭心症や心筋梗塞の発症率が上がりやすくなってしまいます。以下のような対策を取り入れてみましょう。

  • 動物性脂肪の摂取を控える
  • 植物性脂肪や魚の摂取を増やす
  • 適度な運動

このような対策はコレステロールを下げる効果があります。また、定期的な血液検査でコレステロール値を確認し、必要に応じて医師と相談して管理方法を見直すことも大切です。

適度な運動

ここまで紹介した対策にすでに何度も登場している「適度な運動」は、心臓病予防においてとても重要です。運動は血圧の低下、コレステロールの改善、血糖値の管理に効果があります。

ウォーキングやジョギング、サイクリングなど、無理のない範囲で取り入れ、習慣化していきましょう。初心者は以下のような運動と目標がおすすめです。

  • 1日30分のウォーキングを週に5日以上
  • 1週間で合計2.5時間を目標にする
  • 1回10分×3回という方法でも効果が期待できる

今まであまり運動していなかった人の場合、はじめの頃は大変かもしれませんが、適度な運動は健康維持のほかストレス解消にも効果的です。

心身両方の健康維持のためにも、ぜひ取り入れてみてください。

標準体重の維持

標準以上の体重は心臓に負担をかけ、心血管疾患のリスクを高めてしまいます。バランスの取れた食事と定期的な運動を心がけ、適正体重の維持に努めましょう。そのためには以下がおすすめです。

  • 食事の内容を見直す
  • オーバーカロリーに注意する
  • 適度な運動を継続する

医師や栄養士の指導を受けながら、健康的な体重を維持しましょう。料理や食材ごとの栄養価やカロリーを勉強するのもおすすめです。

栄養バランスのとれた食事

栄養バランスの取れた食事は、心臓病予防のほか、健康的な生活維持のためにも欠かせません。野菜、果物、全粒穀物、魚、豆類を中心に、バランス良く摂取することが重要です。

心臓病予防のためには特に以下のような意識をおすすめします。

  • 食物繊維や抗酸化物質を多く含む食品を取り入れる
  • 塩分や飽和脂肪酸を控える

このような工夫は心臓病のリスクを軽減します。食事の改善は、心臓の健康を維持するための基本的な対策になるでしょう。

禁煙

喫煙は心臓病や脳卒中だけではなく、がんや肺疾患・呼吸器疾患などの発症確率も上げてしまいます。

禁煙によって各種の発症リスクを大幅に減少させられるため、喫煙中のかたはぜひトライしてみてください。

禁煙は困難を感じる人も多いかもしれませんが、医師の指導や禁煙外来の利用、ニコチン代替療法などのサポートを活用することで、成功率を高められます。

ストレス管理

ストレスは血圧を上昇させ、心疾患のリスクを高めるため、予防のためにはストレスコントロールも重要です。以下のような対策を取り入れてみましょう。

  • リラクゼーション
  • 趣味の活動
  • 適度な運動
  • 十分な睡眠

また、必要に応じてカウンセリングや医師のサポートなども検討しましょう。

ストレスコントロールは身体だけではなく、心の健康維持にも効果的です。生活を楽しむためにも、ぜひ取り入れてみてください。

まとめ

心臓病は多くの人々に影響を与える重大な健康問題ですが、遺伝性心疾患は特に注意が必要です。

肥大性心筋症、先天性QT延長症候群、遺伝性不整脈など、遺伝性心疾患は家族内で発症しやすく、突然死のリスクも高いため、早期発見と適切な管理が求められます。

遺伝学的検査や遺伝カウンセリングを通じて、リスクを把握し、適切な対策を講じていきましょう。

また、心臓病を予防するためには、血圧の管理、血糖値のコントロール、コレステロールの管理などをはじめ、さまざまな方法があります。日常生活に無理のない範囲で取り入れ、心臓病のリスク軽減を目指しましょう。

国際ハートスリープクリニックつくばでは、遺伝性心疾患をはじめ、さまざまな心臓病のお悩みをご相談いただけます。気になる要因をお持ちのかたは、ぜひ一度ご連絡ください。

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