無呼吸症候群にはどんな治療がある?セルフチェックや検査の流れも紹介
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に呼吸が止まっていたり、低呼吸状態になっていたりすることを指します。
日中に激しい眠気に襲われる、寝ても疲れが取れないなどの経験がある方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性を疑ったことがあるかもしれません。
しかし、どのように治療するのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、睡眠時無呼吸症候群の治療法やセルフチェック、検査の流れなどについて詳しく紹介します。
睡眠時無呼吸症候群の傾向がある方はぜひ最後まで読んでみてください。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に呼吸が10秒以上停止する状態のことを指します。
一晩7時間の睡眠で、30回以上、または1時間あたりに5回以上無呼吸や低呼吸状態が起こる際には、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
また、大きないびきを繰り返すことも、睡眠時無呼吸症候群の症状の1つです。
睡眠時無呼吸症候群になると、睡眠の質が悪くなり熟睡ができません。
そのため、昼間に異常な眠気に襲われたり、身体の疲れが取れなかったりといった症状を感じます。
また、睡眠時無呼吸症候群は、高血圧症や心臓病などの脳血管を悪化させることもわかっています。
重度の睡眠時無呼吸症候群の方の8年後の生存率は、約63%というデータもあるため早めの治療が大切です。
睡眠時無呼吸症候群には発症タイプがあります。
脳・神経・心臓の病気が原因で起こるタイプを中枢型、のどが閉じることで起こるタイプを閉塞型、この2つの両方が原因で起こるタイプを混合型と呼びます。
閉塞型の方が最も多く肥満体型の方によくみられますが、肥満だけが原因とは言えません。
顎が小さい方や舌の根本が落ち込みやすい舌根沈下、飲酒、喫煙なども原因として挙げられます。
主な症状
主な症状として、日中の異常な眠気が挙げられます。
寝ても寝ても眠く、会議中に寝てしまう、だるさが取れないなど、日常生活にも影響が出ている場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性があるでしょう。
また、いびきの大きさや頻度について、家族などから指摘を受ける場合があります。
上記の症状の他にも、夜中に何度も目が覚める、起床時に頭痛を感じる、体がむくむなどの症状もあります。
人によっては、気分が沈んでうつ状態になったり、幻覚が見えたりといった症状が起こることもあるでしょう。
いずれにしても日常生活に大きな影響を与えてしまうため、早めの治療が必要です。
放置することの危険性
睡眠時無呼吸症候群を放置すると、下記の2つの問題が起こります。
1つ目に、日常生活への影響です。
日中にひどい眠気に襲われるため、仕事に集中できず、会議中に寝てしまったり、大事な商談が頭に入らなかったりといった問題が起こる場合があります。
特に危ないのが車の運転です。
運転中に突然眠気を感じ、交通事故を起こしてしまった例もあります。
この他にも、抑うつや勃起障害が起こる方もいて、日常生活に悪影響が生じます。
2つ目に合併疾患のリスクです。
睡眠時無呼吸症候群の方は、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが高いことがわかっています。
睡眠時無呼吸症候群の方とそうではない方を比べると、糖尿病リスクは1.5倍、高血圧は2倍、虚血性心疾患は3倍、脳血管疾患は4倍のリスクがあることがわかっています。
睡眠時無呼吸症候群は、命に関わる深刻な病気にかかるリスクを高めるといえるでしょう。
そのため、睡眠時無呼吸症候群の傾向がある方は、早めの受診と治療が必要です。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療法
睡眠時無呼吸症候群と診断された場合、医師から下記の治療法から最適な治療を選ぶことになります。
- CPAP療法
- マウスピース療法
- 手術
- ナステント
- 生活習慣の改善
- 薬剤やその他の治療法
これらの治療法について、下記で詳しく紹介します。
CPAP(シーパップ)療法
CPAP療法とは、圧力をかけた空気を鼻から送り込み、気道を広げて呼吸が止まらないようにする治療法です。
CPAP機器には、空気を送るチューブと鼻に当てるマスクが付いており、就寝時に鼻にマスクを装着して使用します。
送り込む圧力の大きさは、呼吸に合わせて機器が自動的に調整します。
手術などと異なり、身体への負担はほとんどありません。
CPAP治療を行った場合、睡眠時無呼吸症候群ではない方と同じように呼吸ができるようになることもあります。
ただし、使い始めはマスク装着の違和感が生じたり、風を送り込まれることに慣れず、上手く使いこなせなかったりすることがあります。
短時間から始めるなど、徐々に慣れていくとよいでしょう。
マウスピース療法
マウスピース療法は、マウスピースを着けて寝ることであごを前へ移動させ、舌が気道に落ち込んで呼吸しにくくなることを防ぐ治療です。
治療効果はCPAPには劣るため、睡眠時無呼吸症候群の症状が軽い方に適しています。
マウスピース治療を行う場合は、歯科医院で自分に合ったものを作りましょう。
Webサイトで販売されているものは、自分の口の状態に合わず効果が得られない可能性があります。
検査の結果、睡眠時無呼吸症候群と診断された場合は、健康保険の適応になります。
CPAPよりも小さく持ち歩きが簡単なため、自宅以外で使用するケースが多い方にもおすすめです。
手術
CPAPやマウスピースで治療を続けることで、睡眠時無呼吸症候群の症状が和らぐこともありますが、根本治療としては手術も選択肢の1つです。
ここでは、外科治療の例を2つ挙げます。
1つ目が、上下顎同時前進術と呼ばれる手術です。
上下の顎の骨を切って前にずらすことで口の中にスペースを作り、呼吸をしやすくします。
元々は矯正歯科で行われていた手術でしたが、睡眠時無呼吸症候群にも効果があることがわかっています。
2つ目が、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP)です。
口蓋垂とその周辺の口蓋を部分切除して減らし、呼吸をしやすくする方法です。
扁桃肥大がある方の場合、効果を感じやすいです。
上記以外にも手術の種類は複数あるため、医師の診断を受け、自分に適した治療法を決定しましょう。
手術の種類によっては費用が高額になったり、術後の副作用が長かったりと、負担が大きい場合もあるため、よく検討してから治療を開始してください。
ナステント
ナステントは、やわらかいチューブを鼻から挿入する治療法です。
チューブを鼻から喉まで通し、気道を確保することで、呼吸しやすくなったりいびきをかきにくくなったりといった効果が期待できます。
ナステントは人の肌とほぼ同じ柔らかさのシリコン素材でできているため、鼻の中の粘膜を傷つけにくく作られています。
また、潤滑剤もあるため、鼻への挿入時に痛みや違和感も生じにくく安心して使用できます。
睡眠時無呼吸症候群の症状が、比較的軽い方におすすめの治療法です。
ナステントは持ち運びもしやすいため、出張や旅行によく行く方の場合でも、手軽に治療を受けやすいでしょう。
生活習慣の改善
生活習慣の改善も、睡眠時無呼吸症候群の原因や悪化のリスクを防ぐために必要です。
肥満が原因で睡眠時無呼吸症候群が起こっている場合は、減量することで症状が軽くなるケースがあります。
また、飲酒や喫煙の習慣がある方は、それらの量を減らすなど生活を見直すことが大切です。
飲酒は筋肉を弛緩させるため、いびきや無呼吸状態を起こしやすくなります。
また、喫煙は気道が炎症を起こしやすいため、喉が腫れて狭まり呼吸がしにくくなることがあります。
量を減らすなどできることから始め、生活習慣の改善を心がけましょう。
薬剤やその他の治療法
睡眠時無呼吸症候群は、薬で治療ができません。
ただし、慢性鼻炎などの鼻の病気が原因で口呼吸になっている方の場合、鼻呼吸に変えることで睡眠時無呼吸症候群が改善する場合があります。
アレルギー性鼻炎などが原因と考えられる方は、薬で治療することで症状が和らぐ可能性があるでしょう。
新しい治療法『舌下神経電気刺激療法』とは
睡眠時無呼吸症候群の新しい治療法として、舌下神経電気刺激療法が注目されています。
舌下神経電気刺激療法とは、皮膚の下に機械を埋め込み、睡眠中の呼吸に同期して舌下神経を刺激する治療法です。
舌下神経は舌を動かす神経で、刺激によって舌を前に出すことで気道を広げ、呼吸しやすくなる効果が期待できます。
CPAPのように寝ている間にマスクを付けるというような違和感がないにもかかわらず、同程度の効果が見込まれています。
ただし、専用の機械を皮膚の下に埋め込むため、全身麻酔での手術が必要です。
また、顎に切り傷が生じるため、手術後の日常生活に影響が出る可能性があります。
身体の負担が大きい治療のため、医師とよく相談して受けるか決めるようにしてください。
睡眠時無呼吸症候群のセルフチェック
睡眠時無呼吸症候群の疑いがある方は、下記に当てはまるものがどの程度あるかチェックしてみてください。
- 大きないびきをかいている
- 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘されたことがある
- 睡眠中に息苦しさを感じることがある
- 昼間に強い眠気に襲われることがある
- 起床時に頭痛がある
- 寝ても疲れが取れない
- 心臓病がある
- 糖尿病である
- 高血圧
- 夜中に複数回目が覚める
- 肥満やメタボリックシンドロームの傾向がある
- 浮腫がある
- 顎が小さい
上記の1.2のどちらかに当てはまる場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いです。
また、それ以降の項目に2つ以上当てはまる場合も、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群の傾向がある方は、睡眠外来を受診するようにしてください。
睡眠時無呼吸症候群の検査の流れ
睡眠時無呼吸症候群は、自分だけで病気だと判断できません。
睡眠時無呼吸症候群の傾向に気がついた場合は、病院で検査を受けましょう。
ここでは、検査の流れについて紹介します。
問診
まずは医師による問診を行います。
いびきや無呼吸状態の指摘を受けたことがあるか、自覚症状や既往歴などを質問します。
寝ているときのことは、自分よりも同居する家族が知っていることが多いので、可能であれば一緒に受診するとよいでしょう。
睡眠尺度評価(ESS)
眠気が病気が原因であるかを判断するために、睡眠尺度評価(ESS)と呼ばれる質問票に沿って回答します。
質問に当てはまる項目が多い場合、睡眠時無呼吸症候群の疑いが強いといえるでしょう。
スクリーニング検査
現在の症状が睡眠時無呼吸症候群が原因なのか、他の病気であるのかを判断するために、パルスオキシメータを使ってスクリーニング検査を行います。
指先に機械を付け、血液中の酸素状態と脈拍数を測定し、無呼吸状態による酸素の低下状態を調べます。
この検査は、自宅で行うことが可能です。
ポリソムノグラフィー検査(PSG)
ポリソムノグラフィー検査は、睡眠時無呼吸症候群を詳細に検査する方法です。
問診などの結果、睡眠時無呼吸症候群の症状が重いと考えられる場合に実施されるケースが多いです。
脳波や筋電図、心電図、血中酸素量など、さまざまな項目を調べます。
この検査によって、10秒以上の無呼吸・低呼吸が起こっている数や、睡眠時無呼吸症候群のタイプ、睡眠の質などがわかります。
この検査は、専門の検査施設に入院して行います。
診断・治療方法の決定
上記の検査を行い、睡眠時無呼吸症候群の症状の重さを判断し、治療法を決定します。
睡眠時無呼吸症候群の治療法には、CPAPやマウスピース、外科手術など様々な選択肢があります。
症状の程度によって、医師から適切な治療法を案内されるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群は、早期診断と早期治療が大切です。
症状に気がついた場合は、受診できる病院を探してみましょう。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に無呼吸状態や低呼吸状態が繰り返される病気です。
日中にひどい眠気に襲われたり、いびきが大きいと家族に指摘されたりしたことがある方は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群は、放置すると日常生活に影響を及ぼすばかりか、重大な病気にかかりやすくなるリスクもあります。
症状に気がついた際には、早めに病院を受診することが大切です。
国際ハートスリープクリニックつくばでは、睡眠時無呼吸症候群の検査や治療を行っています。
CPAPは通常1ヶ月に1回程度の通院が必要ですが、当院では3ヶ月に1回の通院で治療できます。
仕事などで頻繁な通院が難しい方は、お気軽に当院にお越しください。