いびき呼吸とは?種類・原因・隠れている病気・放置するリスクを解説!
いびきは多くの人が経験する症状ですが、単なる音の問題ではありません。
健康に深刻な影響を与えるおそれのあるいびきもあり、適切な理解と対処が重要です。
この記事では、いびきの仕組みや種類と原因、そして睡眠時無呼吸症候群まで幅広く解説します。
健康的な睡眠を取り戻すための第一歩として、ぜひご活用ください。
いびきとは?仕組みやメカニズム
いびきは、呼吸時に気道で発生する振動が原因で発生する音です。
仰向けになると、軟口蓋、口蓋垂、舌根、喉頭蓋といった部位が重力によって下に沈み込み、気道(空気の通り道)を狭めます。
この状態で呼吸を続けると、狭くなった気道を空気が通過する際に周囲の組織が振動し、いびき音となります。
睡眠中は全身の筋肉が弛緩するため、気道はより狭くなりやすい状態です。
いびきには個人差があるため音の高低や大きさ、持続時間にはばらつきがあり、また、同じ人でも寝具の状態や体調、寝る姿勢によって変化することがあります。
いびきの種類
いびきには複数の種類があり、その特徴や原因によって分類されます。
適切な対処法を見つけるためには、自分のいびきがどの種類に該当するかを知ることが大切です。
単純性いびき症
単純性いびき症は、多くの人が経験する普通のいびきです。
この種類のいびきは、ストレスや疲労、飲酒、鼻詰まりなどの一時的な要因によって引き起こされます。
単純性いびき症の特徴は、原因が比較的特定しやすく、それを取りのぞくことでいびきを改善できる点です。
例えば、就寝直後や飲酒後、疲労時、鼻がつまっているときにいびきが発生するケースが挙げられます。
また、睡眠中に無呼吸や低呼吸がなく、日中の強い眠気を伴わないタイプも単純性いびき症である可能性が高いでしょう。
一般的に、この種類のいびきが健康に大きな影響を及ぼす例は少ないですが、症状が長期にわたって続く場合は、体がなんらかの問題を示しているサインかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が完全に停止する『無呼吸』や、極端に弱くなる『低呼吸』が繰り返し発生する症状です。
主な原因には、肥満による咽頭周囲への脂肪沈着、扁桃肥大、小さい顎や下顎の後退などがあります。
夜間に頻繁に無呼吸状態が生じると、体内の酸素不足により循環器系に大きな負担がかかり、深刻な合併症のリスクが高まります。
SASに伴ういびきの特徴は、以下のようなものです。
- いびきが朝までずっと続く
- いびき音に顕著な強弱がある
- 一時停止後に大きないびき音と共に再開する
- 仰向けに寝ると悪化する
SASは睡眠の質を低下させ、日中の強い眠気や集中力の低下、さまざまな健康問題のリスクを高めるおそれがあります。
上気道抵抗症候群
上気道抵抗症候群は、無呼吸や低呼吸はないものの習慣的ないびきが見られる状態です。
女性のいびきの多くをこのタイプが占めることが知られています。
上気道抵抗症候群は、さまざまな要因で睡眠中に上気道が狭くなってしまい、呼吸をするのに通常より多くの力が必要となって粘膜が震え、いびきが発生します。
上気道抵抗症候群の特徴は以下の通りです。
- 一時的ではなく習慣的にいびきをかく
- 日中に眠気を感じる場合がある
- しっかり寝ているのに疲労感が残る
睡眠の分断を引き起こすため、十分な睡眠時間があっても日中の疲労感や眠気を感じやすくなります。
いびきの原因
いびきの原因は多岐にわたります。
適切な対処法を見つけるためには、自分のいびきがどの要因によって引き起こされているかを理解することが重要です。
ここからは、いびきの原因を紹介します。
喉などの形
いびきの原因の一つには、個人の身体的特徴が大きく関与しています。
例えば、以下のような特徴がある人は、いびきをかきやすい傾向があるとされています。
- 舌が大きい
- 口蓋垂(のどちんこ)が長い
- 軟口蓋弓(喉の入り口)が狭い、または変形している
- 歯並びが乱れている
- 鼻筋が曲がっている
- 下顎が小さく後退している
これらの特徴は、気道の狭窄や空気の流れの乱れを引き起こし、結果としていびきを発生させるケースがあります。
解剖学的特徴は生まれつきのものが多いため完全な改善はむずかしい場合もありますが、適切な対策を講じることで症状を軽減できる可能性があります。
気道の圧迫(肥満やアデノイド肥大)
肥満は、いびきの主要な原因の一つです。
体重が増えると喉周辺にも脂肪が蓄積し、気道が狭くなります。
同時に、必要酸素量の増加と気道狭窄による酸素摂取量の減少が、呼吸の頻度と深さを増加させ、いびきを悪化させる傾向があります。
さらに、アデノイド肥大も気道を圧迫する要因です。
なかでも子どもの場合は、アデノイド肥大による上気道の狭窄が睡眠時無呼吸のリスクを高めてしまうことがあるため、早めの医療相談が大切です。
飲酒・喫煙
飲酒と喫煙は、いびきを悪化させる生活習慣です。
アルコールの摂取には喉や舌の筋肉を弛緩させる作用があり、これにより気道が狭くなりやすくなります。
さらに、飲酒すると気道の血管が拡張し呼吸パターンに変化を起こすこともあるため、普段はいびきをかかない人でも飲酒後にはいびきをかく場合があります。
一方、喫煙は気道周辺の組織に炎症を引き起こすことで気道が狭まり、いびきがより発生しやすい状態になることが知られています。
加齢
年齢を重ねるにつれいびきをかきやすくなりますが、これには複数の要因が関与しています。
まず、加齢によって舌や喉の筋力が徐々に低下し、気道を十分に開いた状態で維持する能力が弱まります。
また、全身の筋肉が若い頃より弛緩しやすくなることも、いびき増加の理由の一つです。
さらに、女性の場合、閉経後にホルモンバランスが大きく変化するため、これがいびきの発生を高める可能性があります。
睡眠薬の影響
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬には筋弛緩作用があるため、いびきを引き起こす可能性があります。
さらに、レム睡眠中は体の筋肉が緊張を失うため、睡眠導入剤の効果がより顕著に現れやすくなります。
従って、睡眠薬を服用中の人がいびきに悩んでいる場合は、医師に相談することが重要です。
寝るときの姿勢
寝る姿勢はいびきの発生と密接に関連しています。
なかでも仰向け寝は注意が必要です。
この体勢では重力によって舌や軟口蓋が喉の奥に沈み込みやすくなり、その結果、気道が狭まっていびきが起こりやすくなります。
また、普段からいびきがある人の場合、仰向けで寝るとその症状が悪化するおそれがあります。
気道がさらに狭まるため、いびきの音が大きくなったり、頻度が増加したりすることがあるためです。
病気の影響
いびきは、幾つかの病気の症状や結果として現れることがあります。
例として、以下のような病気があります。
- アレルギー性鼻炎や花粉症による鼻づまり
- 鼻中隔彎曲症
- 副鼻腔炎
- 扁桃腺肥大
- 脳の神経障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)
これらの病気がいびきの原因となっている場合、根本的な治療が必要になる可能性があります。
死亡率を上昇させる睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は単なるいびきの問題ではありません。
この症候群は、適切な治療を受けないと重大な健康リスクをもたらすおそれがあります。
症状
一般的に、一晩7時間の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上ある、または1時間あたり5回以上の無呼吸がある場合に、SASと診断されます。
その他、SASの主な症状には以下のようなものがあります。
- 朝まで続く大きないびき
- 日中の強い眠気や疲労感
- 起床時の頭痛や熟睡感の欠如
- 集中力の低下や記憶力の減退
- 夜間頻尿
- 寝相の悪さ
これらの症状が持続する場合、SASの可能性を考慮し、医師の診断を受けることが重要です。
原因
SASの主な原因には以下のものがあります。
- 肥満(患者の60%以上に見られる)
- 顎の形状(小さい、後退している)
- 扁桃腺肥大
- アデノイド肥大
- 閉経後の女性や高齢者
日本人の場合、欧米人に比べて顎が小さく後退している傾向があるため、痩せ型でもSASを発症するおそれがあります。
セルフチェック方法
SASの可能性をセルフチェックする方法の一つに、昼間の眠気をスコア化するものがあります。
以下のような状況での眠気の程度を評価します。
状況 | 眠気の程度 | |||
---|---|---|---|---|
ない | まれに | 時々 | 多い | |
座って読書しているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
テレビを見ているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
公の場で座って何もしていないとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
1時間続けて車に乗せてもらっているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
状況が許せば、午後横になって休息するとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
座って誰かと会話しているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
昼食後(お酒を飲まずに)静かに座っているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
自分で運転中に交通渋滞で2〜3分停まっているとき | 0 | 1 | 2 | 3 |
合計スコアが9点以下の場合、日中の眠気は軽度と判断されます。
10点から14点の範囲では重的な眠気が示唆され、15点以上になると重度の眠気が疑われ、SASの重症度が高いおそれがあります。
ただし、このセルフチェックリストはあくまで参考程度にとどめ、正確な診断や適切な治療方針の決定には、医師による検査が不可欠です。
いびきのセルフケアと治療方法
いびきの改善には、生活習慣の改善から医療機関での治療まで、さまざまなアプローチがあります。
自分にあった方法を見つけることが大切です。
ここからは、いびきのセルフケアと治療方法について紹介します。
鼻詰まりの解消
鼻づまりがいびきの原因となっている場合、まずは鼻詰まりへの対処が効果的な対策となります。
鼻詰まりの改善には、原因に応じたアプローチが必要です。
風邪やアレルギーによる一時的な鼻詰まりは、症状が治まると共にいびきも改善される可能性がありますが、慢性的な鼻詰まりは耳鼻科での診察を受けることが推奨されます。
医師の診断により、適切な治療法を見つけられるかもしれません。
鼻詰まりの解消はいびきの軽減だけでなく、全体的な睡眠の質の向上にもつながる可能性があります。
減量
肥満はいびきの主要な原因の一つです。
適切な食事管理と運動により体重を減らすことで、いびきが改善される可能性があります。
- バランスの取れた食事を心がける
- 適度な運動を日常に取り入れる
- 就寝前の過食を避ける
減量は全身の健康にもよい影響を与えるため、いびき改善以外のメリットも期待できます。
体を横向きにして寝る
仰向けで寝ると重力の影響で舌や軟口蓋が後方に落ち込み、気道を狭くする可能性があります。
意識的に横向きに寝ることで、これを軽減できる場合があります。
横向きで寝る習慣をつけるためには、抱き枕を使用したり、専用のリュックを使用したポジションセラピーを行ったりするのがおすすめです。
専門の病院で治療を受ける
自己対策で改善が見られない場合や、症状が重い場合は、医療機関で診察を受けることが大切です。
病院での治療には以下のようなものがあります。
- CPAP治療
- マウスピース治療
- 外科手術
CPAP治療は、睡眠中に鼻マスクを通じて一定圧の空気を送り、気道の閉塞を防ぐ方法です。
一方、マウスピース治療では就寝時にマウスピースを装着して下顎を前方に保持し、舌の沈下を防止します。
また、いびきの原因が解剖学的な理由である場合、外科的治療が選択肢の一つとなることもあります。
これらの治療法は、症状の程度や原因に応じて選択されます。
適切な治療方針を決定するためには、医師による詳細な診断と相談が不可欠です。
気になる症状がある場合は、まずは医療機関での診察をおすすめします。
まとめ
いびきは単なる音の問題ではなく、睡眠の質や健康に深刻な影響を与えるおそれがある症状です。
その原因は多岐にわたり、適切な対処法も個人によって異なります。
まずは自分のいびきの特徴や原因を理解し、生活習慣の改善から始めるのが大切です。
しかし、症状が改善しない場合や睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、医師の診察を受けることをおすすめします。
国際ハートスリープクリニックつくばでは、睡眠時無呼吸症候群の専門病院として、患者様一人ひとりにあわせた適切な治療プランを提案いたします。
いびきや睡眠時無呼吸症候群にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。