いびきは遺伝する?かきやすい人や原因・対策を徹底解説!
いびきは自分ではなかなか気づきにくいため、パートナーや家族から指摘され困惑している方も多いのではないでしょうか。
じつはいびきは単なる騒音問題ではなく、睡眠の質や健康にも重大な影響を及ぼすおそれがある症状です。
「いびきって遺伝するの?」「なぜ自分だけがいびきをかくの?」こうした疑問は珍しくありません。
この記事では、いびきの発生メカニズムから遺伝との関連性、いびきをかきやすい人の特徴と効果的な対策まで、医学的な観点から詳しく解説します。
いびきの悩みを解消し、質の高い睡眠を取り戻したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
いびきとは?メカニズムや発生のしくみ
いびきは、睡眠中の呼吸に伴って発生する音のことです。
睡眠中は体の筋肉が弛緩するため、舌や軟口蓋、口蓋垂(のどちんこ)などが後方に沈み込み、気道が部分的に閉塞します。
この狭くなった気道を空気が通過する際に、周囲の軟部組織が振動して発生するのがいびき音です。
いびきの発生にはさまざまな要因が関係していて、代表的なものとしては、肥満、アルコール摂取、鼻や顎の異常、口蓋扁桃の肥大などがあります。
これらの要因が単独で、あるいは複合的に作用することで上気道の狭小化を引き起こし、いびきの原因となります。
いびき自体が遺伝することはない
いびきそのものは遺伝しませんが、いびきに関連する要因には遺伝的影響を受けるものがあります。
例えば、顎の形状や顔の骨格など、いびきに影響を与える身体的特徴は遺伝する可能性があるものです。
同時に、食生活や運動習慣などの生活様式も家族間で似る傾向があるため、これらもいびきの発生に影響を与えます。
従って、『いびきは遺伝する』という表現は正確ではありませんが、いびきをかきやすい体質や環境が家族間で共有される可能性はあるといえるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は遺伝する?
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は睡眠中に繰り返し呼吸が止まる状態で、おもに上気道の閉塞によって引き起こされます。
SASについてもいびきと同様、直接的に遺伝するわけではありません。
しかし、上気道の閉塞のしやすさには個人差があり、一部遺伝的要因が関係しています。
例えば、小さな顎や後退した下顎、肥満傾向などの身体的特徴は遺伝する可能性があるため、親がSASの場合子どもの発症リスクも高まるおそれがあるといえるでしょう。
ただし、適切な生活習慣の改善や治療によってリスクを低減でき、また、遺伝的リスクがあっても必ずしもSASを発症するわけではありません。
いびきに影響する遺伝的要因
いびきに影響する可能性のある遺伝的要因として、肥満と骨格が挙げられます。
ここからは、それらの遺伝的要因について詳しく紹介します。
肥満
肥満は、いびきを引き起こす主要な要因の一つです。
体重が増加すると喉の周囲にも脂肪がつき上気道が狭くなるため、空気の通りが悪くなりいびきが発生しやすくなります。
肥満の傾向には、遺伝的要素が関与していることが知られています。
つまり、肥満になりやすい体質を遺伝的に受け継ぐ可能性があり、これによりいびきの発生リスクが高まる場合があるということです。
しかし、肥満には食生活や運動習慣など、生活習慣も大きく関与していて、完全に遺伝で決定されるわけではありません。
顎の形・大きさ(骨格)
小さな顎や後退した下顎などの顎の形態は上気道の狭小化に関与し、いびきのリスクを高めます。
これらの骨格的特徴は遺伝する可能性が高いものです。
日本人を含むアジア人は欧米人に比べて顎が小さく後退している傾向があり、これは遺伝的な特徴の一つです。
この骨格的特徴により、日本人は欧米人よりもいびきや睡眠時無呼吸症候群を発症しやすいとされています。
睡眠中に筋肉が弛緩するとこの狭い空間がさらに狭くなり、いびきや睡眠時無呼吸のリスクが高まります。
遺伝的要因以外のいびきの原因
遺伝的要因以外で考えられるいびきの原因は、加齢、性別、生活習慣、アルコールや睡眠薬、口呼吸、鼻の病気、扁桃肥大とアデノイドなどがあります。
ここからは、遺伝的要因以外のいびきの原因について詳しく紹介します。
加齢
年齢を重ねるにつれ喉まわりの筋肉が緩み、いびきをかきやすくなることがあります。
これは自然な加齢現象の一部であり、多くの人が経験する変化です。
加齢に伴って喉の筋肉や軟組織の弾力性が低下し、より振動しやすくなることが原因の一つです。
また、全身の筋肉量が減少して喉の筋肉も弱くなり、睡眠中に気道を開いた状態に保つ力が弱くなります。
これらの変化により、中年以降の人々はいびきをかきやすくなる傾向があります。
性別
いびきは、性別によってかきやすさが異なり、女性は年齢によって変化が現れる場合があります。
男性のほうがいびきをかきやすい
一般的に、男性は女性よりもいびきをかきやすいといわれます。
これには複数の要因が関係していて、まず挙げられるのは解剖学的な違いです。
男性の気道は女性よりも長く、舌も大きい傾向があるため、男性の上気道はより閉塞しやすくなります。
また、女性ホルモンの一つであるプロゲステロンには上気道の筋肉を活性化する作用がありますが、このホルモンが男性の体内には少ないため、女性よりもいびきをかきやすいといえます。
女性ホルモンの減少(女性)
女性は閉経後にいびきが増加する傾向があります。
これは先程述べた女性ホルモン(特にプロゲステロン)の減少によるものです。
プロゲステロンには上気道の筋肉を活性化する作用があるため、プロゲステロンレベルが高い時期(妊娠中など)は、いびきのリスクが低下する場合があります。
逆に、閉経後はプロゲステロンの分泌が大幅に減少するため、上気道の筋肉の緊張が低下し、いびきのリスクが高まるといえます。
また、閉経後はホルモンバランスの変化により体重が増加しやすくなることも、いびきのリスク上昇の一因です。
生活習慣
不規則な生活、運動不足、過度のストレスなどの生活習慣はいびきの原因となります。
不規則な生活は体内時計を乱して睡眠の質を低下させ、眠っている間の喉の筋肉の緊張維持を困難にします。
また、運動不足は全身の筋力低下を招きますが、これは喉の筋肉も例外ではありません。
そして、過度のストレスは睡眠の質を下げ、暴飲暴食などの不健康な習慣を引き起こします。
さらに、喫煙もいびきのリスクを高める重要な要因です。
タバコは鼻やのどの粘膜に炎症や腫れ・むくみを引き起こし、上気道を狭めます。
喫煙者は非喫煙者の約2倍いびきのリスクが高まり、SASの罹患リスクは4.4倍になるといわれています。
アルコールや睡眠薬
就寝前のアルコール摂取や睡眠薬の使用は、いびきを悪化させる可能性があります。
アルコールが中枢神経系の抑制剤として作用し、喉や舌の筋肉を含む全身の筋肉を弛緩させるのが原因です。
また、睡眠薬、特にベンゾジアゼピン系の薬剤には筋弛緩作用があるため、喉や舌の筋肉が弛緩しいびきのリスクが高まります。
口呼吸
なんらかの原因で習慣的に口呼吸になっていると、いびきや無呼吸を起こしやすくなるといわれています。
口呼吸では下顎が後方に移動して落ち込み、気道閉塞を引き起こしやすくなるためです。
また、口呼吸は鼻呼吸に比べて気道が乾燥しやすく、喉の粘膜を刺激してしまうこともあります。
鼻の病気
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)や鼻中隔弯曲症、アレルギー性鼻炎などの鼻の疾患は、鼻閉を引き起こし、結果的に口呼吸を促進していびきのリスクを高めます。
これらの疾患は鼻腔内の空間を狭くしたり、鼻粘膜の腫れを引き起こしたりします。
その結果、鼻呼吸が困難になって口呼吸に頼らざるを得なくなり、いびきのリスクが高まるためです。
また、花粉症などの季節性の症状も、特定の時期にいびきを悪化させる可能性があります。
扁桃肥大・アデノイド
子どものいびきの原因として多いのが、扁桃やアデノイド(咽頭扁桃)の肥大です。
扁桃やアデノイドは、通常は感染から体を守る役割を果たしている免疫系の一部です。
しかし、これらが過度に肥大すると気道を物理的に狭くし、空気の流れを妨げていびきが発生します。
子どもの場合、これらの組織は成長するに従い相対的に小さくなっていくため、年齢と共にいびきが改善することも多くあります。
しかし、重度のケースや症状が長引くときは、医療機関での受診と治療が必要になるでしょう。
自宅でできるいびきの対処法
ここでは、自宅でできるいびきの対処法を2つ紹介します。
横向きで寝る
仰向けで寝ると重力の影響で舌が後方に落ち込み、咽頭が閉塞しやすくなります。
そのため、横向きに寝ることでいびきを軽減できる可能性があります。
横向きの姿勢では舌が気道を塞ぐリスクが低くなり、さらに軟口蓋や口蓋垂も横に寄るため振動が起こりにくくなるためです。
生活習慣の改善
いびきの多くは生活習慣と密接に関連しているため、日常生活の見直しが効果的な対策となります。
- 肥満の解消
- 規則正しい睡眠
- 禁煙
- 節酒
- 適度な運動
- 就寝環境の整備
- 水分摂取
これらの生活習慣の改善は、いびきの軽減だけでなく、全体的な健康状態の向上にも寄与します。
ただし、改善が見られない場合や重度の場合は、医療機関の受診が必要となることがあります。
病院でのいびきの治療法
病院で受けられる代表的ないびきの治療法を3つ紹介します。
マウスピース(口腔内装置)
マウスピース(口腔内装置)は、軽症から中等症の睡眠時無呼吸症候群やいびきに対して効果的な治療法です。
歯科医師によって個別に作製された装置を就寝時に装着して行います。
マウスピースの利点は、非侵襲的であること、持ち運びが容易であること、次に紹介するCPAP療法に比べて使用が簡単であることなどが挙げられます。
なかでも下顎後退がある人に効果的です。
ただし、顎関節への負担や歯の位置の変化などの副作用がある場合もあるため、定期的な歯科チェックが必要です。
また、重度の睡眠時無呼吸症候群には効果が現れにくいときがあります。
CPAP(シーパップ)治療
CPAP(持続陽圧呼吸療法)は、中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群の治療法です。
この治療法では、睡眠中に専用の機器を使用して鼻や口から一定の圧力で空気を送り込みます。
CPAPの主な効果は以下の通りです。
- 気道の確保
- いびきの軽減
- 無呼吸の防止
- 睡眠の質の改善
CPAP療法のメリットは、高い治療効果と即効性です。
また、血圧を下げる効果があるという報告もされています。
ただし、マスクの装着感や機器の音など使用になれるまでに時間がかかる場合があり、定期的な通院や機器のメンテナンスも必要となります。
外科手術
いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因が明確に解剖学的理由にあるケースでは、外科手術が検討されることがあります。
外科手術のメリットは解剖学的な問題を直接的かつ根治的に修正できる点で、成功すれば長期的な効果が期待できます。
ただし、手術にはリスクや回復に時間がかかるなどの問題もあり、すべての患者さんに効果があるわけではありません。
そのため、手術の選択には慎重な検討が必要です。
いびきの治療方法の選択は、症状の程度、原因、患者の全身状態などを総合的に評価して決定されます。
軽度のいびきであれば生活習慣の改善から始め、症状が重い場合や睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合は、専門医の診断を受けて適切な治療法を選択することをおすすめします。
まとめ
いびきは単なる騒音の問題だけではなく、睡眠の質や健康に大きく影響する症状です。
その原因は多岐にわたりますが、対策としては、まず生活習慣の改善から始め、必要に応じてマウスピースやCPAP療法などの医療的介入を検討するとよいでしょう。
国際ハートスリープクリニックつくばでは、個々の患者様の状態に応じた治療法をご提案しています。
当院のCPAP療法は3ヶ月に1回の通院で対応可能、遠隔モニタリングシステムできめ細かいコントロールが可能なため、患者様の負担を軽減しつつ効果的な治療を提供しています。
いびきや睡眠時無呼吸症候群でお悩みの方は、ぜひ当院にご相談ください。