メニュー

1時間以上のいびきは睡眠時無呼吸症候群?危険ないびき・リスクの高い人を解説

[2024.08.26]

いびきは多くの人が経験する一般的な現象ですが、そのなかには健康に悪影響を及ぼす危険なものも存在します。

なかでも1時間以上の長い時間続くいびきは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があり、注意が必要です。

この記事では、いびきの種類や危険性、SASの症状や原因、なりやすい人の特徴、検査方法、治療法などについて詳しく解説します。

健康的な睡眠を取り戻すために、いびきについての正しい知識を身につけましょう。

1時間以上など長く続くいびきは危険?

いびきは、持続時間や頻度によっては、健康上の問題を示唆している場合があります。

どのようないびきに注意が必要なのでしょうか。

まずは、長く続くいびきについて詳しく紹介します。

一過性のいびきであれば問題ないことが多い

寝る前にお酒を飲んだときや風邪をひいているとき、疲れがたまっているときなどに、普段いびきをかかない人でもいびきをかくことがあります。

これは、筋肉の弛緩が通常よりも大きくなり、上気道が狭くなるのが原因です。

このような一時的ないびきは、健康に大きな影響を及ぼすケースは少ないとされています。

起床時にすっきりと目覚めていれば、心配する必要はないでしょう。

繰り返す場合は睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性

しかし、毎日習慣的にいびきをかいている場合は注意が必要です。

なかでも朝まで続くいびきや強弱のあるいびき、仰向けに寝ると大きくなるいびきは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の可能性があります。

SASは、睡眠中に無呼吸や低呼吸が生じる病気です。

この状態が続くと血液中の酸素量が減少し、「しっかり寝ても疲れがとれない」「午前中からだるい」といった症状が現れます。

また、SASは単に睡眠の質が低下するだけでなく、さまざまな生活習慣病のリスクを増大させる深刻な問題です。

日本ではいびきをかく人は約2000万人いるとされ、そのうち約300万人から500万人がSASではないかと推定されています。

しかし、実際にSAS治療を受けている患者さんは多くなく、このことから潜在的なSAS患者が多数いると考えられています。

注意したい危険ないびき

いびきには、単なる騒音問題以上に注意が必要な『危険ないびき』があります。

例えば、大きないびきが突然止まりしばらくしてから再開する場合や、無呼吸状態のあとに詰まりが取れたような大きないびきが聞こえる場合は要注意です。

このようないびきは、上気道が完全に塞がれ呼吸が止まっているために発生しているいびきかもしれません。

無呼吸により低酸素状態が続くと体に大きな負荷がかかり、心筋梗塞や脳卒中などの重大な疾患のリスクが高まります。

また、普段いびきをかかない人が突然大きないびきをかき始めた場合も危険信号です。

睡眠中に脳卒中が発生すると、舌が喉の奥に下がっていびきが生じることがあります。

このような場合はすぐに意識状態を確認し、少しでも異常を感じたら救急車を呼んだほうがよいでしょう。

さらに、いびきが毎晩続き日中の強い眠気や疲労感、集中力の低下などの症状がある場合も注意が必要です。

これらは睡眠の質が著しく低下している証拠であり、SASなどの睡眠障害の可能性が高いといえます。

危険ないびきに気づいたら、早めに医療機関で受診することが重要です。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が繰り返し止まる病気です。

まずは、SASについて正しく理解することが、適切な対処の第一歩となります。

症状

SASのおもな症状は、大きないびきと睡眠中の呼吸停止です。

医学的には、『10秒以上の無呼吸や低呼吸が1時間に5回以上』または『ひと晩に30回以上』発生する状態と定義されます。

これらの症状に加えて、以下のような兆候が見られる場合があります。

  • 日中の強い眠気や疲労感
  • 起床時の頭痛や口の渇き
  • 集中力の低下や記憶力の減退
  • 気分の落ち込みや不安感の増大
  • 夜間頻尿
  • 熟睡感の欠如

これらは、睡眠の質が著しく低下していることを示唆する症状です。

また、SASにより体が低酸素状態に繰り返しさらされるため、心臓や血管系に大きな負担がかかり、その結果、高血圧、心筋梗塞、脳卒中などのリスクが高まるおそれがあります。

さらに、日中の強い眠気は作業効率の低下や交通事故のリスク増加にもつながります。

原因

SASの主な原因は、睡眠中に上気道が狭くなったり塞がったりすることで、以下のような要因が関係しています。

  • 肥満
  • 顔や首の構造
  • 扁桃腺の肥大
  • 鼻の病気
  • 加齢
  • 飲酒
  • 喫煙
  • 睡眠薬の影響
  • 性別
  • ホルモンの変化

これらの要因が単独で、あるいは組みあわさって作用し、SASを引き起こすと考えられています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)になりやすい人

SASは誰でも発症する可能性がありますが、特定の特徴や生活習慣をもつ人はよりリスクが高くなります。

ここでは、SASになりやすい人の特徴を詳しく紹介します。

肥満

肥満はSAS発症の主要なリスク因子です。

体重過多の人は喉の周囲や舌に余分な脂肪が蓄積し、気道が狭くなりやすくなります。

なかでも、最近急激に体重が増加した人や、学生時代と比べて10kg以上体重が増えた人は注意が必要です。

肥満によって体に必要な酸素量も増加するため、呼吸がより困難になるおそれがあります。

骨格や形状

顔や首の構造も、SASのリスクに大きく関わっています。

以下のような特徴がある人は気道が狭くなりやすく、SASのリスクが高くなります。

  • 小さな顎や後退した下顎
  • 顔が小さい
  • 二重顎
  • 舌や舌根が大きい
  • 扁桃腺が肥大している
  • 首が短い

これらの特徴は、睡眠中に舌が喉の奥に落ち込みやすくなり、気道塞ぐ原因となります。

また、日本人は顔の前後径が短く喉が咽頭に近いという特徴があり、SASを発症しやすい顔の構造をしているといえます。

花粉症や鼻炎がある

鼻づまりや鼻炎は、口呼吸を引き起こす要因です。

口呼吸をすると顎が下がった状態になり、舌を支える筋力が衰えてしまいます。

その結果、睡眠中に舌が喉の奥に落ち込んで気道が狭くなり、いびきやSASを引き起こす危険性が高まります。

飲酒・喫煙習慣がある

アルコールには筋肉の緊張を緩める作用があるため、飲酒後は喉の筋肉が緩んだり舌が喉に落ち込みやすくなったりして、いびきやSASのリスクが高まります。

また、喫煙は咽喉頭部に炎症を起こし、気道の狭窄を引き起こすおそれがあります。

男性

性別で見ると、男性のほうが女性よりもSASにかかりやすい傾向があります。

男性の発症率は女性の約2〜3倍といわれています。

これは、男性が上半身に脂肪がつきやすく、顎や喉に脂肪が蓄積しやすい体型の特徴を持っているためです。

また、上気道の筋肉を緊張させる作用のある女性ホルモンが少ないためでもあります。

閉経を迎えた女性

閉経後の女性は、ホルモンバランスの変化によりSASのリスクが高まります。

一部の女性ホルモンにはいびきやSASを防ぐ働きがありますが、閉経後はその分泌が減少します。

そのため、閉経後の女性は注意が必要です。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査方法

SASの正確な診断と適切な治療法の決定には、専門的な検査が不可欠です。

検査にはおもに簡易検査と精密検査の2種類があり、患者の状態や必要性に応じて選択されます。

これらの検査により、SASの有無だけでなく、その重症度も判定できます。

簡易PSG検査

簡易PSG(ポリソムノグラフィー)検査は、自宅で行える比較的簡単な検査方法です。

この検査では、鼻と指先に呼吸のセンサーを装着し、就寝中の呼吸の状態と血液中の酸素濃度を測定します。

おもにAHI(10秒以上続く無呼吸や低呼吸の1時間当たりの回数)と、血中酸素飽和度の低下状態を診断します。

患者さんにとっては普段の睡眠環境で検査できるため、自然な睡眠状態を反映しやすいのが利点です。

また、病院への入院が不要なため、時間的・経済的な負担が少ないのも特徴です。

精密PSG検査

精密PSG検査は、より詳細かつ包括的なSASの診断を可能にする検査方法です。

この検査では、脳波、筋電図、心電図、呼吸状態、血中酸素濃度など、さまざまな生体信号を同時に測定します。

AHIの測定に加えて、睡眠の質(睡眠の深さや分断の有無)、不整脈の有無、その他の睡眠障害の存在なども診断可能です。

精密PSG検査では、在宅検査と在院検査を選択できます。

在院検査の場合、検査用の個室に入院するためより正確なデータを取得できる一方で、医療費が高くなる傾向があります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療法

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療には、症状の程度や原因に応じてさまざまな方法があります。

適切な治療法を選択することで、症状の改善や合併症のリスク低減が期待できます。

減量

肥満はSASの主要な原因の一つです。

喉の周囲に脂肪が蓄積し気道が狭くなってSASが引き起こされるため、適切な体重管理はSAS改善の重要な手段となります。

日頃の生活習慣を見直し、適正カロリーの摂取、栄養バランスの取れた食生活、運動不足の解消などに取り組むことが大切です。

なかでも急激な体重増加後にSASの症状が現れた場合は、元の体重まで減量できれば症状が改善する可能性が高くなります。

マウスピース治療

軽症から中等症のSASに適した治療法です。

専用のマウスピースを就寝時に装着して下顎を前方に突き出し、舌根部の気道を広げます。

これにより、いびきや無呼吸の改善が期待できます。

装着後に医師による微調整が必要な場合がありますが、顎の後退が原因でSASを発症している患者さんには効果的である可能性が高いです。

ただし、顎関節症の既往がある場合や、残存歯が少ない場合、重度の歯周病がある場合などは適用外となることがあります。

CPAP(シーパップ)療法

中等症から重症のSASに対する標準的な治療法です。

CPAPは『Continuous Positive Airway Pressure』の略で、持続的に気道に陽圧をかけることを意味します。

就寝時に鼻マスクを装着して一定圧の空気を送り込んで気道を広げ、無呼吸を防ぐ方法です。

CPAPによる治療では、日中の眠気軽減や死亡率低下のデータも示されています。

CPAP療法は効果が高い反面、機器の使用になれるまで時間がかかる場合がありますが、日中の慣らし装着や圧力設定の微調整などで改善できることが多いです。

医療スタッフのサポートを受けながら、徐々に使用に慣れていけます。

外科手術

外科手術は、明らかな解剖学的問題がSASの原因となっている際に検討される治療法です。

例えば、扁桃腺が大きく肥大している場合は、耳鼻咽喉科で扁桃腺摘出術を行うことがあります。

また、のどの開口部が狭い場合は、軟口蓋(のど仏の軟らかなひだの部分)を切除する手術を検討することもあります。

ただし、外科的治療は他の方法で改善が見られないときや、明確な解剖学的問題があるケースにおいて考慮される治療方法です。

まとめ

いびきは単なる不快な音ではなく、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の兆候である可能性があります。

長時間続くいびきや日中の強い眠気などの症状がある場合は、医師による検査を受けることをおすすめします。

SASは適切な治療により改善可能な疾患です。

自分にあった治療法を見つけ、質の高い睡眠を取り戻して健康的な生活を送りましょう。

国際ハートスリープクリニックつくばでは、患者様の症状に応じた治療法をご提案しています。

当院のCPAP療法は3ヶ月に1回の通院で対応可能な体制を整えており、患者様の負担を軽減しつつ効果的な治療を提供しています。

いびきや睡眠時無呼吸症候群でお悩みの方は、ぜひ当院にご相談ください。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME