健康長寿に思うこと
超高齢社会を迎えた日本において、「健康長寿」は誰もが願う理想の生き方であり、社会全体の目標でもあります。しかし、「長寿=幸福」とは限らず、真に目指すべきは「健康で自立した生活をいかに長く維持できるか」であると私は考えます。
医療現場に身を置いていると、「もっと早く検査を受けていれば」「生活習慣を見直していれば」という言葉を何度となく耳にします。寿命は医学の進歩によって延びましたが、健康寿命、すなわち「介護を必要とせず、心身ともに自立して過ごせる期間」を延ばすことこそ、これからの医療・社会福祉の使命です。
健康長寿の鍵は「予防」にあります。生活習慣病の管理、適度な運動、バランスの取れた食事、そして質の良い睡眠。特に睡眠は見過ごされがちですが、心臓病や高血圧とも深く関係しており、健康維持の根幹をなすものです。近年注目されている睡眠時無呼吸症候群(SAS)も、放置すると心血管リスクを大きく高める疾患であり、早期発見・治療の重要性が増しています。
さらに、高齢期においては「つながり」も重要です。社会的孤立は心身の健康に悪影響を及ぼすため、地域や家族との交流、社会参加の機会を持ち続けることが、健康長寿の一助となります。
「人生100年時代」と言われるいま、単に長生きするのではなく、「どう生きるか」が問われています。一人ひとりが日々の暮らしを見つめ直し、少しでも健康的な選択を積み重ねることで、より良い長寿を実現できると信じています。