リンゴ病とは
リンゴ病(正式名称:伝染性紅斑、英語:Erythema infectiosum)は、主に小児に見られるウイルス感染症で、**ヒトパルボウイルスB19(Human parvovirus B19)**が原因です。以下に、最新のガイドラインや文献を参考にして、詳細に解説します。
🔬 1. 病因と病原体
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原因ウイルス:ヒトパルボウイルスB19
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DNAウイルス
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赤血球前駆細胞を標的とするため、造血抑制を引き起こすことがある
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👶 2. 疫学
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好発年齢:4~10歳の小児が中心
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感染経路:
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飛沫感染
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接触感染
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垂直感染(母体から胎児へ)
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季節性:春〜初夏に流行しやすい
🧬 3. 潜伏期間
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通常4〜14日(最大21日)
🩺 4. 症状と臨床像
第1期(前駆期):
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微熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛など、風邪様症状(インフルエンザ様)
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この時期が最も感染力が高い
第2期(発疹期):
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頬がリンゴのように赤くなる(両頬に蝶型紅斑)
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1〜2日後に腕・脚・体幹にレース状の紅斑が出現
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発疹出現時には感染力はほぼ消失
第3期(回復期):
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発疹が再燃することがある(刺激、日光、入浴、運動などで)
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通常は1〜3週間で消失
⚠️ 5. 合併症とリスク群
一般的には軽症だが、以下のリスク群では重篤化する可能性あり:
妊婦:
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胎児に感染すると胎児水腫(hydrops fetalis)や流産のリスク(特に妊娠20週未満)
鎌状赤血球症・サラセミアなどの溶血性貧血のある患者:
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**一過性赤芽球癆(transient aplastic crisis)**を引き起こす
免疫不全患者:
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持続的なB19ウイルス感染による慢性的貧血
🧪 6. 診断
臨床診断が主(典型的な発疹と病歴)
補助診断:
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血清抗体検査(IgM陽性で急性感染)
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PCR検査(免疫不全患者や胎児感染疑いの場合)
💊 7. 治療
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特異的治療法なし(対症療法)
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解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)
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安静、水分補給
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合併症がある場合:
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輸血(赤芽球癆時)
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免疫グロブリン療法(免疫不全例)
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妊婦管理は産婦人科との連携が重要
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🛡️ 8. 予防
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ワクチンなし
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患者との接触を避ける
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妊婦への注意喚起(流行時期や施設での注意)
📚 参考文献・ガイドライン
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日本小児科学会 感染症ガイドライン
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CDC(米国疾病予防管理センター)
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感染症法に基づくリンゴ病の届出基準
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感染症発生動向調査(厚生労働省)
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📝 メモポイント(要約)
項目 | 内容 |
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原因 | パルボウイルスB19 |
感染経路 | 飛沫、接触、母子感染 |
特徴的な症状 | 両頬の紅斑、レース状の発疹 |
潜伏期間 | 4~14日 |
感染力 | 発疹前に最も高く、発疹出現時は低下 |
高リスク群 | 妊婦、免疫不全者、溶血性疾患持ち |
治療 | 対症療法中心、重症例では支持療法 |
予防 | ワクチンなし、妊婦への注意 |